【無幻真天楼 第十三回・弐】雨が止んだなら
「私…京助を助けられるんだっちゃ? 私が?」
緊那羅が何度も聞き返し阿修羅がその度頷く
「そうやんきに」
「私が…」
ちらっと京助をみた緊那羅の顔に笑みが浮かんだ
「ただ…な」
ふぅっと阿修羅がため息をつく
それを見て緊那羅の笑顔が少し壊れた
「ただ…何だっちゃ?」
緊那羅が聞くと阿修羅がゆっくり緊那羅を見る
なかなか続きを話そうとしない阿修羅の代わりに雨音がざぁざぁともういいからってくらいに屋根に話し掛けている
「…ただ…今のお前じゃダメなんきによな」
「え…?」
「えー…何って言えばいいんかのー…;」
ガリガリ頭を掻いて阿修羅が言葉を探す
「私にできるけど今の私にはできない…んだっちゃ?」
緊那羅の頭の上に? マークが数個浮かんだ
「今のままのお前じゃダメなんきにな…そのー…あー…」
「今のままの…?; え?;」
緊那羅の頭の上の?がさらに増えていく
「んー…とな; お前の中に竜の力がある…んだけど普段は表にでとらんきにな? それを引っ張りださないとダメなんきに」
阿修羅の話を緊那羅が黙って聞く
「ただ…竜の力を表に出すと…緊那羅が奥にいってしまうんよ…そうなったら…お前はたぶんまた暴走して竜のボン助けるどころじゃなくなるんきに」
「…ぼう…そう…?」
緊那羅がきょとんとした顔で聞き返した
「清浄に怪我させたろ?」
緊那羅の目が大きくなる
「今のお前が清浄にあんな怪我負わさせることできると思うけ?」
ぶんぶんと緊那羅が首を振ってうつむいた
柴田と呼ばれている人物を初めて見たときから凄く嫌な感じがした
清浄と呼ばれる姿になった柴田を見たとき自分の中にあった何かが膨れ上がってそれが弾けた
そこには緊那羅ではなく操がいて自分の知らない京助や記憶がどんどん流れ込んできて自分は誰なのかわからなくなった
どうしていいかわからなくなった
そんな自分が今緊那羅としてここにいるのは呼んでくれたから
緊那羅という名前を呼んでくれたから緊那羅としてここにいることができて
だから
「…どうしたらいいんだっちゃ…? どうしたら私のままで竜の力を使うことができるんだっちゃ?」
緊那羅が顔を上げないままで聞く
助けたい守りたい
「操はちゃんと京助を守ったのに助けたのに…緊那羅の私だって京助を助けたい…守りたいんだっちゃ」
緊那羅が顔を上げて一呼吸
「京助を助けるためなら守れるなら私は何だってどんなことだってやるっちゃ」
緊那羅が言い切ると阿修羅が笑みを浮かべた
「そう来るとおもったんきに…緊那羅、オライが前にお前にやった竜の宝珠のカケラ…あるけ?」
「え…あ…うん部屋に…」
「チョイもってこいや」
緊那羅が頷き部屋から出て行くと阿修羅の顔が途端難しい顔つきになった
「…指徳…け…」
ボソっと阿修羅が呟く
「…若干違うような気はする…でもあれは…」
ぎゅっと目を瞑って溜息をはいた阿修羅
「…--------------------…」
阿修羅の口だけが動いて綴った誰かの名前
悔しそうに阿修羅の口元が歪んだ
作品名:【無幻真天楼 第十三回・弐】雨が止んだなら 作家名:島原あゆむ