小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

なにサマ?オレ様☆ 司佐さまッ!

INDEX|57ページ/58ページ|

次のページ前のページ
 

30:ジ・エンドッ☆



 司佐が自分の部屋に行くと、そこにコトハの姿はなく、昭人だけがソファに座っていた。
「昭人……コトハは?」
 その言葉に、昭人はバルコニーを指差す。
「一人になりたいって言うから」
 それを聞いて、司佐は静かにバルコニーへと近付いた。
「コトハ……」
 司佐がそう呼ぶと、コトハは静かに振り返る。
「司佐様」
「どうしたんだ? 夜風なんかにずっと当たっていたら、風邪を引くぞ」
「いえ……なんだかいろいろわがままを言ってしまい、少し反省していました」
「反省はいいけど、後悔はするなよ。俺だってもう、あんな思いしたくないんだからな」
 その言葉に、コトハは微笑む。
「大丈夫です。後悔なんてしません。私だって、もう司佐様から離れたくないですから」
 それを聞いてやっと安心するように、司佐はコトハを抱きしめた。
「結婚しよう」
 それはあまりに唐突な言葉だったが、思わずそう言った司佐に、コトハは嬉しさを噛みしめるように頷く。
「はい……」
 それを見届けた昭人は、もはや離れられない二人なんだと認識する。
「幸せになってもらわないと困る」
 そっと呟き、昭人は司佐の部屋から出ていった。





 それから数年後――。
「げ、貴一。おまえタキシードかよ。新郎じゃねえんだぞ」
 有森家のリビングで、貴一に向かって藤二がそう言った。
「いつでも新郎役が出来るようにしないとな。黒タキシードだからいいだろ。本当は白のが似合うんだけど、今日ばかりは司佐に譲る」
「新郎だからな」
「あーあ。これでコトハも人妻か」
「それを奪うのもまた醍醐味か」
「藤二。おまえのほうが危険思想だな」
「貴一には負けないよ。双子なんだからね。そろそろ行こう」
 二人は用意された車に乗り込み、屋敷を出ていく。
 着いた先は、海辺のチャペルだ。入口に掲げられた「山田家・沢木家結婚式場」という大きすぎる看板に、今日のビッグイベントを想像させる。
「うわあ。さすがに山田家と沢木家の結婚式。歴史に名を残す式になりそうだな」
 貴一がそう言ったのは、すでに集まった人々の多さと、著名人揃いの顔触れのせいである。
 それもそのはず、大財閥の山田家と大企業の沢木家の結婚ともなれば、業界でも話題になっていた。
「貴一兄様。藤二兄様」
 そこでそう呼ばれ、二人は振り返った。するとそこには、従兄弟の桃子がいる。
「桃子。今日は来ないと思ってた」
「どうして? 失恋の傷はもう癒えたわ」
「良家のぼっちゃんと合コンばかりやってるって、噂になってるぞ」
「お兄様たちには関係ないわ。それより早く行きましょうよ。控室」
 桃子に連れられ、二人は建物内へと入っていく。
 司佐に失恋した桃子だが、この数年の間に随分吹っ切れたようだ。しかし、何処かでまだ司佐のことを想っているのだと、長い付き合いの貴一や藤二にはわかっている。
「桃子。今度、大学の男いっぱい紹介してやる」
「本当? お兄様たちの紹介じゃ、チャラい男ばかりのような気がするけど……」
「嫌ならべつにいいよ」
「いいわよ! 会ってみるくらい」
 三人は笑いながら、山田家の控室へと入っていく。
 するとそこには、白いタキシードに身を包んだ、司佐の姿があった。
「司佐」
 その声に、立ったまま服の手入れをしてもらっている司佐が振り向く。
「おう。おまえら、来てくれたのか」
「もちろん。いやあ、着飾っちゃって」
「今日くらいはな」
「司佐様、かっこいい!」
「サンキュー」
 少し大人びた表情で、司佐はそう礼を言う。
「コトハは?」
 貴一がすかさず聞いたので、司佐は苦笑した。
「もうすぐ来る。おまえ、コトハに馴れ馴れしくすんなよな。それから藤二も。おまえは貴一みたいに遊び人に見えない分、始末が悪い。基本的には貴一と一緒なのに」
「心外だな、司佐」
 その時、ノックとともに昭人の声がした。
「新婦がお見えになりました」
 その言葉に、一同は出入口に視線を注ぐ。
 やがて開いた扉の向こうには、純白のドレスを身に纏ったコトハが立っていた。
「わあ。綺麗だよ、コトハ!」
「本当に綺麗だ」
 すかさずそう言って近づいたのは、貴一。それに続いて藤二が駆け寄る。
 後れを取って、司佐は貴一と藤二を止めた。
「おい! たった今言ったばかりだろう。馴れ馴れしくすんな」
「綺麗なものを綺麗と言って何が悪い。おまえなんて、生唾飲み込んだの知ってるぞ。コトハ、司佐のやつ、君が綺麗過ぎて物も言えないって感じだったよ」
 貴一の言葉に、コトハは照れて顔を赤らめる。
「そんな……ありがとうございます。来ていただいて」
「当たり前だよ。僕ら親戚になるんだしさ」
 コトハは司佐を見つめる。
「あの……どうですか?」
 ドレスを広げて尋ねるコトハに、司佐は視線を逸らせた。
「どうって、べつに……ドレス買う時、もう見ただろ」
「そうですけど……」
「まあ……いいんじゃないか?」
「そうですか。よかったです」
 その時、開いたドアから龍太郎が顔を覗かせた。
「こんにちは、みなさん。トコ、もう少し手直しするそうだから、戻ってくれって言ってるよ」
「うん。じゃあ、失礼します。次はお式でお会いすることになると思います。今日はよろしくお願いします」
 コトハはそう言って、龍太郎と昭人とともに去っていった。
「いいのかよ、司佐。龍太郎をコトハに付かせて」
 貴一の言葉に、司佐は苦笑する。
「兄妹だからな。女は準備に時間がかかるから、お付きはたくさんいたほうがいい。昭人も一緒に居させているし、大丈夫だよ」
「しかし、もう少し言いようがあるんじゃないの? 司佐」
「言いようって?」
「コトハにだよ。世界で一番綺麗だよとか、食べちゃいたいくらい可愛いよとか、言えないのかよ」
「おまえらじゃあるまいし……そんなもん、人前で言うか。後で死ぬほど言ってやるからいいんだよ」
 照れ屋な司佐に、一同は笑う。
「でも、結局コトハが高校卒業するまで待ったんだな」
「そうそう。コトハさんが十六になったら、すぐに結婚するなんて言ってたのにね」
 藤二の言葉に乗って、桃子も話に入ってくる。
 司佐は笑いながら椅子に座った。
「本当は、親は俺が大学出るまで駄目って言ったんだけど、そこまで我慢出来なかったからな」
「司佐はまだ大学だけど、コトハはこれからどうするんだ?」
「一応短大には行くけど、それ出たら花嫁修業」
「花嫁修業? もう充分だろ」
 同時に言った貴一と藤二の言葉に、司佐も頷く。
「そうだとは思うけど、コトハ自身がやる気だから」
「はあ。山田家次期当主の嫁ともなれば大変だよな」
「まあね。でもコトハなら大丈夫だ」
「そうだろうね」
 一同はクスリと笑う。
 そこに、昭人が入ってきた。
「昭人。どうだ? コトハの様子は」
「緊張しているけど、準備はバッチリ。司佐もそろそろ出番だよ」
「よし」
 急に司佐の顔つきが変わる。司佐といえど、人生最大のビッグイベントのひとつで、緊張もあるのだろう。
「じゃあ司佐。僕たちは先に行ってる。頑張れよ」
「ああ。ありがとうな」
 貴一たちは先に部屋を出ていった。
 残された司佐は、昭人を見つめる。
「遂に来たな。この日が」