小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

なにサマ?オレ様☆ 司佐さまッ!

INDEX|20ページ/58ページ|

次のページ前のページ
 

11:宣戦布告ッ?



 有森家の食堂では、貴一と藤二に挟まれ、コトハが座った。目の前には、二人の両親、そして妹が座っている。
「あの……私、こんな席にいて良いのでしょうか……」
 おどおどして、コトハが貴一に小声で言った。
「どうして? もちろんだよ」
「でも、私はメイドですよ?」
「そんなの、うちには関係ないし」
 二人の会話が聞こえ、二人の両親は笑った。
「コトハさん。どうか身構えないでちょうだい。司佐さんのメイドさんって聞いたけど、今は同じ蘭梗学園の生徒なんでしょう? 貴一と藤二の友達として、どうぞお食事を楽しんで」
 二人の母親が言った。二人の母親は、司佐の父親の妹である。
 コトハは微笑み、お辞儀をした。
「では、お言葉に甘えて……いただきます」
「ええ、召し上がれ。でも、二人が女の子を連れてくるなんて初めてね。どっちかのお嫁さんに来てくれない?」
 母親の言葉に、貴一と藤二が吹いた。
「な、なに言ってんだよ、母さん!」
「あら。だって、こんな可愛らしい子なら、どちらかのお嫁さんにいいじゃない。メイドさんだからって、今の日本に身分があるわけでなし。それにメイドさんなんだから、礼儀作法も普通のお嬢さん並みにはあるでしょ」
「そうじゃなくて、この子は司佐の恋人なの」
「あら、そうなの? 残念」
「まったく母さんには驚かされるよ。ド天然なんだからな」
「あら。本気で言ってたのよ?」
 フランクな二人の母親に、コトハは嬉しさを感じていた。
 その時、執事が一同の前に出る。
「お食事中失礼致します。山田司佐様、小島昭人様がおいでになられております。お食事中と申しましたら、別室で待っていらっしゃるそうです」
「ははーん。遂に乗り込んできたか。ここに通していいのに」
 貴一が言った。
「そう申しましたが、別室でお待ちになられると……」
「だってさ、コトハ。早く食べて、司佐に顔見せしてやるか」
「は、はい」
 司佐が来てくれた喜びに微笑み、コトハは食事に手をつける。
「私も司佐お兄様に会いたい」
 そう言ったのは、二人の妹・みどりである。まだ十三歳で中学生のため、学校でも校舎が違って会う機会がない。
「いいよ。誰が早く食べられるか競争な」
「おまえたち。食事はゆっくり優雅に食べるものだよ」
 父親の言葉に、貴一は苦笑する。
「今日は別です。本家のぼっちゃん待たせていいんですか?」
「それは……まったく、おまえたちは……」
 そんな楽しい会話の中で、コトハも逸る気持ちを抑え、食事を続けた。

 司佐は通された応接室から、庭へと出ていった。向こう側には貴一の部屋も見える。
「司佐。コーヒー頂いたよ」
「持ってきてくれ」
 昭人は司佐にコーヒーカップを渡す。
「昭人……俺は女々しいかな」
 庭を見つめながら、司佐が言った。
 昭人は苦笑し、口を開く。
「どうして? コトハはきっと喜ぶよ。まるで騎士(ナイト)みたいじゃない。それに、貴一さんたちだってわかってくれてるはずだよ」
「……そうかな」
 その時、ドアがノックされ、司佐は一瞬、息を呑む。
「どうぞ」
 すると顔を覗かせたのは、貴一と藤二の妹、みどりであった。
「みどり……」
「司佐お兄様! 会いたかったわ」
「ああ……貴一たちは?」
「置いてきたわ。私、司佐お兄様が来てるって言うから、急いで夕食食べて来たのよ」
 みどりは昔から、司佐に懐いてくる。
「なんだ。ゆっくり食べてよかったのに」
「だって、中等部と高等部じゃ会うことも出来ないし、最近全然会う機会もないんだもの」
「ハハ。ごめん」
「昭人も久しぶりね」
 使用人ということで、みどりは昭人には上から目線だ。だがそれも、上流階級のお嬢様なので普通のこと。昭人も慣れている。
「お久しぶりでございます。みどりお嬢様」
 大人を装って、昭人はそう頭を下げた。
「みどり。お父さんとお母さんはいる? いるなら挨拶しないとな」
「ええ、いるわ。後で来るって言ってたけど」
「そう。じゃあちゃんとしておかないと」
 司佐はシャツを正して言った。両親がいるとなれば、挨拶しないわけにもいかない。
 と、そこに、ドアがノックされた。
「はい、どうぞ」
 そう言って、昭人はドアを開ける。入って来たのは、貴一と藤二とコトハ、そして有森家の両親であった。
「これはみなさん勢揃いで……突然押し掛けてすみません」
 令息モードで、司佐はそう頭を下げた。
「いいのよ。近いのに全然会わないわね。ご両親が海外に行っている間は、うちでごはんも食べなさいな」
 夫人が言ったので、司佐は苦笑する。
「それじゃあ、毎日こちらで世話にならなきゃなりません」
「やあ、毎日でも構わないよ、うちは」
 有森氏が答えたが、司佐は首を振った。
「両親がいない間は、ボクが家を守らないと」
「ハハハハ。さすがは山田家の後継ぎだ。頼もしい限りだよ。うちの息子たちと同じ年とは思えない」
「そんなことはないですよ。今日も二人にお願いがあって、わざわざ来たんですから」
「そう。じゃあ、私たちは席を外した方が良さそうね。でも、ゆっくりしていってね」
「ありがとうございます」
 有森夫妻は、そう言って出て行った。
「みどり。みどりも席を外してくれる? 男同士の話があるんだ」
 司佐の言葉に、みどりは頬を膨らませる。
「コトハさんも女じゃない。ねえ、司佐お兄様。本当にコトハさんが、お兄様の恋人なの?」
「え?」
「さっき貴一お兄様が、そう言ってたから……」
 それを聞いて、司佐はみどりの髪を撫でる。
「そうだよ。コトハは僕の恋人だ。みどりももう少し大きくなったら、素敵な人が現れるよ」
「イヤ! みどり、お兄様と結婚したいのに!」
「みどり。うだうだ言ってないでさっさと寝ろよ。そんなんじゃ、司佐に嫌われるぞ」
 貴一が横から口を挟む。みどりは更に頬を膨らませた。
「なによ! みんなして、みどりをのけ者にして!」
「それは違うよ、みどり。それに大丈夫。将来のことなんて誰にもわからないんだから。みどりはきっともっと綺麗になるから、その時ボクが結婚してなかったら、みどりをお嫁さんに考えさせてもらってもいい?」
 みどりを宥めるように優しく、司佐はそう言った。
「う、うん。いいよ。でもその時は、司佐お兄ちゃんなんて好きじゃないかもしれないんだからねっ!」
「それは残念だな」
「ウッソだもーん。じゃあ、今日のところは退散します。おやすみなさい」
 そう言って、やっとみどりは去っていった。
 司佐が振り向くと、藤二が拍手を始める。
「さすが司佐。女性の扱いがうまくてらっしゃる」
「って言うより、ありゃあ二重人格だ。なにがボクだよ」
 藤二に続いて、貴一が言った。
「うるせえな。生きる知恵だろ」
「で、本題は?」
 司佐に、貴一が尋ねる。
「コトハを返してもらいに来た」
 その言葉に、コトハは嬉しくなる。
「ヤダ」
 だが、すぐに反論したのは貴一である。その反応は、司佐は百も承知だ。
「この通りだ!」
 深々と頭を下げる司佐に、貴一は驚いた。だが、続きが見たくなる。
「……それだけ? まあ司佐クンが、土下座なんか出来ると思ってないけどぉー」