小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

なにサマ?オレ様☆ 司佐さまッ!

INDEX|19ページ/58ページ|

次のページ前のページ
 

10:キイチとトージッ!



 コトハは貴一に連れられ、学校から出ていった。
「どこへ行くんですか?」
「どこって、僕の家だよ」
 コトハの質問に、貴一が尋ねる。
「貴一さんは、歩いて帰られるのですか?」
「うん。僕んちすぐそこだし。そうか、コトハちゃんは、司佐と一緒に車通学か」
「はい」
「まったく、おぼっちゃんだよなあ、司佐は。司佐の家のほうが、うちより近いんだぜ? 学園の隣なんだからさ。裏門から入りゃすぐだってのに、車通学なんて笑えるよな」
 貴一の言葉に、コトハは驚いた。
「そうなんですか? 山田家本宅は、この学園の隣にあるんですか?」
「うん。知らなかったの? まあ、どっちも広大な敷地だからね。車通学の意味もわかるけど……門から家まで時間かかるしな」
 そう言いながら、貴一は大きな屋敷の門をくぐる。山田邸と比べればかなり小さいのだが、それでも大きな屋敷である。
「ここが貴一さんのおうちですか?」
「そう。司佐の家に比べりゃ狭いだろ」
「でも、大きなお屋敷ですね」
「ありがとう。入って」
 貴一が中に入ると、山田邸のように、メイドや執事が出迎えた。
「お帰りなさいませ、貴一様」
「ただいま。この子はコトハちゃんと言って、司佐のお客さんだ。今夜一晩うちに泊まらせるから、部屋を用意して。それまで僕の部屋にいるから」
「かしこまりました」
 貴一はそう言って、一階にある貴一の部屋へとコトハを連れて行った。
「ここが貴一さんのお部屋ですか?」
「そう。庭が気に入ってて、わざわざ一階にしてもらった」
 大きな窓を開けると、庭が一望出来る。山田邸とはまた違った綺麗な庭だ。
「わあ。綺麗なお庭!」
「だろ? 僕の一番のお気に入り」
「藤二様のお部屋も近いんですか?」
「うん。ここの二階だよ」
「やっぱりご兄弟で、仲がいいんですね」
「まあ、悪くはないかな」
 庭に下りるバルコニーの手すりに座り、貴一はコトハを見つめる。
「コトハ……って、呼んでいい?」
「え? はい」
「コトハは、本当に司佐と付き合ってるの?」
 ズバリを言われ、コトハは口をつぐんだ。今朝、司佐に口止めされたばかりである。
「それは、言えません」
「どうして? さっき司佐が認めたのに?」
 ズバズバと質問を重ねる貴一に、コトハは真っ赤になる。
「なるほど。その真っ赤になった感じで、本当みたいだね」
「あの……黙っていてくれますか?」
「さあ……僕は口止めされてもいいけど、それは無理なんじゃない? あれだけの生徒が聞いてたんだ。明日には全校生徒に広まってるよ」
「そんな……」
 貴一は苦笑する。
「好きなんだ? 司佐のこと」
「はい。私のご主人様ですから」
「ご主人様? それと恋は違うだろ」
「そうでしょうか? でも私は司佐様のことが好きですし、それ以外の男性をどうとか思いませんよ?」
 正直なまでのコトハの答えに、貴一は頷いた。
「はあん。君も物好きだな。あんな暴君」
「司佐様のことを悪く言わないでください! とても優しい方です」
「そう。でも、今日は僕のものだからね?」
 その言葉で、一気に緊張感を持ち、コトハは背筋を伸ばす。
「はい。一生懸命、お仕えさせていただきます」
「いや、そういうのを望んでるわけじゃないんだけど……」
 その時、遠くでドアがノックされた。
「はーい。どうぞ」
 貴一の返事に入って来たのは、藤二である。
「おう。おかえり」
「おかえりなさいませ、藤二様」
 貴一に続いて、コトハがそう言って出迎えた。
「ただいま……」
 コトハのいる光景が真新しく、藤二は目をパチパチさせる。
「なんだよ、藤二。その顔」
「いや……なんか物珍しいっていうか、なんていうか」
「ハハハ。確かに、僕もそう。コトハに調子狂わされてるとこ」
「なんだよ、それ」
 笑い合う二人に、コトハは心を温かくさせる。
「何? コトハ。僕たち、なんか変?」
 クスクスと笑うコトハに、貴一が言った。
「いえ。似ていないと思っていましたが、やっぱり双子のご兄弟ですね。笑顔がそっくりです」
「え、そうかな?」
 貴一と藤二は、互いを見つめる。
「僕たち双子だけど、二卵性だからか性格も顔も全然違うんだよな。まあ兄弟だし、似てないことはないんだけど。ちなみに妹がいるけど、そいつはどっちにも似てないよ」
「そうなんですか。いいですね、兄弟って」
「コトハは一人っ子か」
「はい」
「ご両親は?」
「あ……もともと父はいません。母も体が弱くて、もう――」
「お母さんも……そうか、悪いことを聞いた」
「いえ。今、私は幸せですし」
 コトハの境遇の断片を知り、貴一と藤二はコトハの手を取る。
「今日は山田家で働くっていうしがらみもない。思い切り遊ぼうぜ」
 そう言ってくれた二人に、コトハは微笑んだ。
「ハイ!」

 家に戻った司佐は、昭人に後悔の念をぶつける。
「みんなの前で、コトハの前で、みっともない負け方しちまった……!」
 そう言う司佐を、昭人は冷静に宥める。
「……でも貴一さんは、コトハをどうこうしないと思うよ」
「どうしてそんなこと言えるんだよ」
「だって、貴一さんだよ? そりゃあ遊んでるっていう話も聞くけれど、基本的に優しい人だ。司佐の怖さもわかってるって、藤二さんも言ってたし」
 昭人の話を半分聞きながら、半分で司佐は不安な妄想をかき立てる。
「コトハが悪いんだ……あんな子犬みたいに何も知らない従順そうな顔して。あれじゃあ俺じゃなくとも、男が放っとかない」
「いや、それはおまえが主人だからだろ。僕から見たらなんとも……」
「本当か?」
「う、うん……」
 昭人の脳裏で浮かぶコトハは、たった一歳違いとはいえ、子供にしか見えない。逆になぜ司佐がそんなにぞっこんなのか、意味さえわからないほどだった。
「明日まで待つのか……」
「大丈夫だって。あちらにはご両親もいるんだし、そうそう手を出せるとは思わないよ」
「おまえはコトハが眼中にないから、そんなこと言えるんだ。あの野獣兄弟だぞ? あの広い屋敷なら、いくらでも死角はある。今頃コトハ、何処かに閉じ込められて泣いてるかも……」
 うなだれる司佐に、昭人はそんなことがあるか、とは言えず、ただただ宥めていた。