プール
どれくらいそうしていたのか、僕はただこの世界の風景となっていた。誰もいない学校のプール。その中の背景。
ただ、水面を見つめる。その瞳の中に何かが浮かぶ。
「人」が映った。
水の上、学生服を着た僕がいた。白いシャツ、黒のズボン。
あれは、僕だ。
僕が水面に浮かんでいた。死んでいるのだろうか。ここからじゃ上手く確認できない。
ここにいる僕と、あそこにいる僕。どちらが僕なんだろう。
鈍い色した空。太陽が眩しい……。
僕は死んだ。僕は死んだ?いや、誰が死んだ……。くら、くら、目眩がする。ああ嫌だ嫌だ。胸に鉛が乗ったように重い。
最後に見た、水に光る太陽……。
そして思い出す。それはとても大切なこと……。なぜ忘れていたのだろう。
僕には双子のきょうだいがいた。そう、「あれ」があの日死んだのだ。
僕の代わりに。
あの日溺れたのは泳げない僕の方だった。あれは僕を助けようとしてプールの水に溺れて死んだのだ。とてもあっけなく。
あれは僕とは違い、とても眩しい人だった。僕はあれが嫌いだった。
けれど、僕はあれだった。あれは僕だった。
あれがいなければ僕は生きられない。
あれは死んだ。
そして、僕の心も死んだ。僕は僕を失ってしまったのだ。永遠に。
悲しい、哀しい、苦しい、そんなすべての感情が麻痺してしまったようだった。僕は何も感じなくなった。
僕の時間は永遠にあの日のプールの世界。