~双晶麗月~ 【その4】
◆第11章 ここにいる理由◆
私の体を動かすラシャと、その向かいに立つミシェルは、カーテンのかけられた窓とソファーの間に立っていた。ミシェルは腕組みをして窓側にもたれる。とても不機嫌な表情。
「この身体、なんだか居心地がいいわ。あんな岩場にずっといた私の体なんて……あのまま腐った魚にでもなりそうだったわ」
ラシャはミシェルの感情を逆なでするようにそう言って、再びソファーに座った。
「いつ返すつもりですか?」
「ふふふ、どうしようかしらね?このまま[あの子]になってしまおうかしら?」
「あなたは咲夜から封印を取り上げ、さらに体まで取り上げるつもりですか?」
ミシェルはラシャに冷たく言い放つ。
「いやぁね。[あの子]は自ら私の所へ来たのよ?」
ミシェルは窓際にもたれ、不機嫌なまま話す。
「僕は咲夜に結界を張らせました。その証拠に2階の部屋を見ればわかります」
「だから何だと言いたいの?」
「あの結界が張られているうちは[この世界]の住人以外、異世界のもの全ては咲夜に触れることができないはずなんです」
「……あの子、結界張らずに私の所へ来たわよ?」
ラシャが含み笑いをする。
「そうですか?僕は咲夜に結界の張り方は伝えましたが解除の仕方は教えていませんよ」
「ぐ…偶然解除されたんじゃない?」
動揺するラシャ。
あの時『こんな簡単な結界壊せるわよ』と、結界を解除したのはラシャだった。
「偶然などありえません。ただ、同じ魂を持つもの同士ならば、解除もありえるでしょう。
[魂を呼応させていれば]ですが」
同じ魂……私とラシャが……それが[分身体]ということ……?
「でも咲夜があなたと呼応するとは思えません。僕は咲夜に[まだ早い]という旨は伝えてありますから」
私はギクリとした。
ミシェルに言われていた言葉……忘れていたわけではないんだけど……
作品名:~双晶麗月~ 【その4】 作家名:野琴 海生奈