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野琴 海生奈
野琴 海生奈
novelistID. 233
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~双晶麗月~ 【その4】

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 ミシェルは冷たい表情のまま、[ワタシ]を避けてソファーに浅く座る。そして自分の足に両肘を置き、両手を組んだ。ソファーから垂れるミシェルの黒いコートの裾には血がついている。乾いているのか少し黒ずんで見えた。

「どうするつもりですか。このままではまたフェンリルがここへ来ますよ?」
「ふふふ、いいんじゃない?だってミシェルは[ワタシ]を護ってくれるんでしょう?」
「何を言ってるんですか」

「護ってくれるんでしょう?ねぇ?」
 そう言って甘えた声を出す[ワタシ]は、ミシェルの顔を覗き込む。

 どう考えても話しているのは私じゃない……もちろん体を動かしているのも違う……
 誰が私の体を使っているのか?でもあきらかにミシェルは私の方を見て話している。
 話しているのが私じゃないということ、ミシェルは気付いているのか?


 ミシェルは再び[ワタシ]を避けるように立ち上がり、カーテンを少し開けて外を覗いた。外は薄暗い。夕方だ……

「あなたを[護れ]と言うのですか?」
 ミシェルがそう言って振り向くと、少しだけ開けられたカーテンの隙間から、窓ガラスが見えた。そこには部屋の中が映っていた。こちらを向くミシェルの背中と、それと向き合う私の姿。
 ノースリーブの白いシャツにタータンチェックのミニスカート、これは間違いなく私の服だ。長い黒髪と……もちろん顔も私そのもの。なのに勝手にしゃべる口、勝手にミシェルにもたれ、勝手に動く……!

「ミシェル……アナタできないとでも言うの?」
「時期前に開放してしまったあなたを護る必要などないでしょう?ラシャ……」


『ラシャ』……? 
 そういえば!あの海底にいた白い悪魔……!確か交代するって言ってた……
 誰にでもある深層の泉……その中にいたラシャと私が交代?
『ワタシが表に出られる』って……『ずっと中から見ていた』って……こういうことなのか!? 

 私はやっとラシャが言っていたことがわかった。