~双晶麗月~ 【その4】
「ミシェル!!」
雄吾とラシャが叫ぶ。
吹き飛ばされたミシェルはヒラリと床に着地する。左腕には大きな傷。そこから流れ出る血。
「君たちは何をやってるんですか!ここは危険だ!すぐに逃げて!」
ミシェルはそう叫び、黒いコートの裾を破ると、片側を口にくわえ、左腕の傷口を素早く結んだ。
ラシャは不安そうに叫ぶ。
「ミシェル!!」
「だめだ!……ここでは狭すぎる!どこか広い場所へ誘導する!」
ラシャの叫びも届かぬうちに、ミシェルはそう言って巨大な気配の方へ向かっていく。
ただならぬ気配の方へ消えていったミシェルを、呆然と見つめるラシャ。そんな[ワタシ]の腕を雄吾は掴んだ。
「おい!行くぞ!」
「やめて!ミシェルが…!」
「お前さっきアイツが言ってたことわかんねぇのかよ!」
「ワタシが傷つけば咲夜も傷つくんでしょ!そんなことわかってるわよ!ミシェルもアナタも咲夜を護るために戦うんでしょう?」
「あのな!オレ、女には手ェ上げねぇって決めてるけどよォ!お前まじでムカつくわ!」
「だったら殴ればいいでしょう!それとも咲夜に傷がつくのがそんなに怖いの?」
「ふざけんじゃねぇっ!」
雄吾は怒鳴った。今までこんなに怒りを露にしている雄吾を見たことがなかった。
「お前さ、アイツが何で戦ってるのか分かってんだろ?」
「でも……!」
「わっかんねぇやつだな!もういいよ!とにかく来いって!」
そう言って雄吾は[ワタシ]を連れて、割れた窓ガラスの隙間から外に出た。
ところがすぐに[ワタシ]は立ち止まる。
何か、体がおかしい……?
特に両肩の痣の辺りが……ドクンドクンと脈打つように反応している……?
作品名:~双晶麗月~ 【その4】 作家名:野琴 海生奈