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野琴 海生奈
野琴 海生奈
novelistID. 233
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~双晶麗月~ 【その4】

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「おいっ!何立ち止まってんだよ!早くしねぇと喰われちまうぜ!」
「う…ん……何か体が……」
「体が何だって?ほら!行くって言ってんだろ!」
 雄吾は[ワタシ]の腕をぐいぐい引っ張り、庭を抜け道路へ走り出る。

 家の方を振り返ると、キッチンからリビング辺りの壁が崩されている。その間からミシェルは外へ飛び出し、大きな黒い翼を広げた。
 その後を追いかけるあれは…間違いなく狼一族!でも、今までのそれとは全然違う……太い四足は大地をしっかりと踏みしめ、その地に窪みを作る。今までの狼よりも長く固い毛が全身を覆い、その背丈は2階を越えそうなほどある。敷地内に入りきらないその体の末端には、太く長い尾が伸びている。

 [ワタシ]は道路に立ち止まったまま、ピタリと動きを止めた。

「おい!何やってんだ!どうすんだよこっちに来ちまったら!」
 雄吾は強引に[ワタシ]の腕を引っ張るが、足が動かない。
「ちょっ!こんなとこにいたらマジで喰われちまうって!」
 雄吾は後ろを振り返りながら、なんとか[ワタシ]を連れ出そうとしている。

 すると突然低い声が脳内に響く。
【誰が…喰われるだと……?】

 その声を聞いて、私は一気に血の気が引いた。
 それは、以前私を襲った狼一族の声と良く似ていた。だが以前よりも明らかに異質な気配がする。そして老女のような……
 
「雄吾!ラシャから離れて!」
「えっ?」
 遠くから物凄い勢いで飛んでくるミシェルの姿を雄吾が見つけると同時に、ラシャからは白い光が放たれる。
「う…わ!なんだよこれ……!」
 雄吾が目を細めているうちに、白い羽根が次々に舞い上がる。そしてさらに目が開けられないほどの強い光が全てを包む。

「だめだ!間に合いません!」


 その時最後のミシェルの声だけが木霊しているようだった。





…【その5】http://novelist.jp/527.htmlへつづく。