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野琴 海生奈
野琴 海生奈
novelistID. 233
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~双晶麗月~ 【その4】

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「実は……表層も深層も幽閉されたラシャを開放するには、分身体側を強制的に人間界に降ろし、それを[消滅]させなければいけませんでした」
「それってまさか……」
「そうです……分身体とは、同じ魂を共有する者。ラシャの分身体は……咲夜です」
「なっ……!咲夜は咲夜じゃねぇって言うのかよ!しかも分身体を消滅って……咲夜を殺すってのかよ!」
 そう言ったと同時に、雄吾はミシェルの胸倉を掴む。

「いえ、ラシャは狼一族の術を使い、[氷の満月]が来る前に表層に出てきてしまった。これも狼一族の思惑通りだったのかもしれません。今の状態で咲夜を消滅させても、狼一族の思いのままラシャは利用されてしまうでしょう。逆に今のラシャが深層に戻ったとしても、狼一族の封印がある限り、ラシャはアースガルズに戻れない。とにかくラシャの封印を解いて、そして分身体としての咲夜を切り離します」

「分身体を切り離すですって!?そんなこと……!」
 ラシャが声を荒げる。
「大丈夫、あなたが消滅することはない。僕がなんとかします」
「咲夜はどうなるってんだよ!死んじまうのかよ!」
「咲夜も………」
「なんとかするってのかよ!」
「僕は咲夜を護ると決めた。だから死なせはしない。絶対に」


 『死なせはしない』って……本当に……?



 その後、急にミシェルは険しい顔をした。何か、様子を探っている。
 そしてミシェルの瞳の色が、淡いグレーから徐々に濃いブルーに変わってゆく。

 雄吾はそんなミシェルに気付いたようだが、それを打ち消すように話し続けた。
「死なせないって……できるのかよ!」

「シッ!やはり来ました。ちょっと騒ぎすぎたようですね」
 ミシェルがそう言ったと同時に、室内がビリビリと音を立てる。

 まさか…こんな時に狼一族…?
 雄吾がいるのに……!