~双晶麗月~ 【その4】
「じゃあ[コイツ]はなんなんだよ!」
「ラシャ・イズンと言います。分身体である咲夜の本体です」
「分身体ぃ??意味わかんねぇよ!」
「…………これには事情があるんです。
ラシャは、永遠の若さを約束すると言われている果実〔リべ・アップル〕を育てていました。そのリンゴはラシャの能力でないと育たないんです。神族の者たちは定期的にそれを食していました。そのおかげで全ての神族はいつまでも若く、そして長く生きられる。
そこで全ての世界を征服したい狼一族は、邪魔となるアース神族のラシャの能力を封印しました。そしてそのラシャを狼一族の王妃にしようと考え、ラシャに術をかけました。その後さらに、ラシャは狼一族に手引きする術者によって、分身体だけではなく表層意識全てを深層の泉に幽閉されてしまったんです」
「深層の泉って何だよ」
「精神世界……みたいなものでしょうか」
「精神世界ぃ〜!?わけわかんねぇな」
「元々深層の泉は人それぞれにあるんですが、皆そこに分身体を持ちます。大抵の人はそれに気付かないか、表に出さない。もちろんそこに介入できるのは、本人か分身体のみ。あとは、第三層に棲む術者です」
「第三層!?」
「はい。第三層にはニズホッグや狼一族が棲んでいます。そこの術者が唯一介入できるわけですが、僕もその一人……と言えるかもしれません。でも僕はつねに介入できるわけではないので……」
「で、どうすりゃ助けられるんだよ」
「百年に一度だけ訪れる[氷の満月]と呼ばれた日、唯一その日にニズホッグが棲むフヴェルの泉と繋ぐ扉が出現するんです。そのタイミングで、狼一族によって幽閉されていたラシャを救い出す予定だったのですが……」
そういってミシェルは[ワタシ]の方を見た。
作品名:~双晶麗月~ 【その4】 作家名:野琴 海生奈