~双晶麗月~ 【その4】
◆第12章 赤い封印◆
「オレちょっと前に見たんだ、大量の真っ赤な花びらが空き地に落ちてるのを。フツーそんなことありえねぇだろ?近く見たってそんな花咲いてるわけでもねぇし。そン時のあいつ、ヘンだったんだよ!なんか…ごまかしてるっつーか、隠してるっつーかさ!」
そう言いながら、雄吾はミシェルの方へ歩み寄る。
そして再びミシェルの肩を掴んだ。
「なぁ!あいつが泣いてた時、何持ってたと思う?花びら持ってたんだよ!白いハンカチに包んでさ!それ、空き地に落ちてた花びらと同じなんじゃねぇのか?なんであんな花びら、茶色くなるまであいつは大事そうに持ってるわけ!お前なんか知ってんじゃねぇのか!」
ミシェルはうつむき、深いため息をついた。
「あんた[兄貴]なんだろ?あいつを泣かせんなよ!」
「……そうですね」
「咲夜はどこにいるんだよ!教えろよ!知ってんだろ?」
「はい……雄吾君にはやはり……言わなければいけませんね……」
雄吾は掴んでいた手を離した。
「ただ……全容を話した所で、理解するには難しいかもしれません」
「だからなんだってんだ!オレはな!咲夜が大丈夫なのかどうかが知りたいんだよ!」
《雄吾…ありがとう……》
私は雄吾の言葉が胸に沁みた。
すると、ミシェルが口を開いた。
「雄吾君……、ここに咲夜はいないです」
「じゃあどこにいるんだよ!」
「人々の深層心理と繋がる泉です。今はそこに幽閉されてる状態です」
「幽閉?助け出せるのかよ!」
「もちろん。そのつもりです」
《ここにいないって……ミシェル……やっぱり気付いてないんだ……》
私はそれでもほんの少しミシェルに期待していた。
作品名:~双晶麗月~ 【その4】 作家名:野琴 海生奈