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野琴 海生奈
野琴 海生奈
novelistID. 233
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~双晶麗月~ 【その4】

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 今、同じ体を共有している[ワタシ]はリビングのソファーに座る。その主導権はラシャにあった。窓の近くに立つのはミシェル。

 リビングのドアが突然開く。
「おい!ホントさ、マジ切れるって!それ、ケンカ?なんなの?」
 さっきミシェルに追い出された雄吾が入ってきた。

「盗み聞きなんて趣味悪いですね。でも[ちゃんと]聞こえてたんですか?」
 ミシェルは白々しく聞く。

「それはよォ……[だいたい]聞こえてたよ。うん……」
「[だいたい]……ですか?この部屋はちょっとした細工をしてあるので、あなたに会話は聞こえないはずですけどね」

 『ちょっとした細工』…?さっきの軽結界のことか……
 ミシェルは雄吾の覗き見に気付いてたのか?

「う〜っ……だから[だいたい]っつってんだろ!口の動きで[だいたい]わかるんだよ」
「そうですか」
 ミシェルはそっけなく言う。

「今あなたに言うことはないです。今は出て行ってもらえませんか?[咲夜]は具合が悪いんです」
「あのさ!オレが気付いてないとでも思ってるワケ?一応さっきは様子見してみたけどおかしいことくらいオレにだってわかるんだよ!」
「何を言ってるんですか?」

 ところが雄吾は突然ミシェルの胸倉を掴んだ。
「オレはな!咲夜はどこ行ったかって聞きてんだよ![コイツ]の具合がどうのってハナシしてんじゃねぇんだよ!」
「咲夜はここに……」
「違うだろ![コイツ]は咲夜じゃねぇ!ぜってぇ違う!」
「……ドアの隙間から見てただけで、違うと言い切れるんですか?」
「あぁ!違うね!仕草も癖も目つきも!さっきは騙されそうだったけどよ!こんだけ動いてっとこ見てたらオレだってわかるんだよ!」

 さすが雄吾だ…やっぱりわかってくれたんだ…!

 雄吾は拳で壁を叩きつけ、うつむいた。
「オレが知ってる咲夜は…[兄貴]がこっちに来てからずっとなんか考えこんでるみたいで、オレが聞いてもどうでもいい返事ばっかだった…それでも少しは前より明るくなったように感じて、嬉しかった。あいつ…いつも強がってばっかだし、クチ悪くて…オレに涙なんて見せたことなかったんだよ…だけど、あの日の咲夜は泣いていた。自分で泣いていることも気付かねぇくらいに!」
 ミシェルは驚いたように目を見開いた。