出張
弁当を食べると仲間になる。
というのが彼らのルールらしい。
言われると何となく私もそんな気分になってきた。
そして彼らの顔ぶれ、口ぶりから、どんな人間がココに集まってきているのかという事も想像できたのだ。
逃げてきた人間。一言で言えばそんな連中の吹き溜まり。
リストラされた男。
男に棄てられた女。
定年後に女房に逃げられた男。
カードで破産したOL。
家出してあても無くふらついていたガキ。
私も仲間なのか、この連中と……?
不況による大幅な人員整理を逃れて辛うじて残った会社。
だが希望の職種からは外され、慣れない営業職を嫌々ながらに続けている私。
日々が過ぎてゆくのを待っている様な私は、確かにココに居る資格を十分に備えているのかもしれない……。
そんな思いに乱され、彼らの無気力な笑顔に吸い込まれそうになった。
喉が渇くと同時に、冷や汗が滲んでくる。
汗を拭くため、ハンカチをポケット取り出そうとした時、何かが手に当たった。