小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

戯曲 坐臥

INDEX|2ページ/5ページ|

次のページ前のページ
 


愛を知る女:
 私達はね、自分の感情を操れないのよ。発作が起こるともうおしまい。どうしたって自分の中のものを吐き出してしまうの。もし吐き出さなかったら、狂ってしまうのよ。そう言う風に作られているの。だから私達は愛を知るのよ。
哲学する男:
 そんなものは欺瞞じゃないか。
愛を知る女:
 欺瞞でもいいのよ。慰めになれば。この世の全ての事を知る事なんて、人間には到底出来ない事ですもの。
哲学する男:
 俺は人間が嫌いだ。すべからく人間は平気で嘘をつく。馬鹿で、粗野でどうしようもない。微生物にも劣る存在にも関らず、虚栄心だけは万物の頂点と来ている。
愛を知る女:
 善でもない、悪でもない。けれどあなたは人を悪とも思えない。
哲学する男:
 俺は憎んでいる。善でもなく悪でもないものを。
愛を知る女:
 あなたは赦しているのよ。善でもなく悪でもないものを。赦すという行為は、まだ人を愛せる証拠なの。だから尊いのよ。

 愛を知る女、椅子の横で気だるげに横たわる。
 哲学する男、その様子をしばらく見つめた後、顔をそむける。そこへ上手から永遠の少女登場。踊るような足取りで舞台の中央へ。

作品名:戯曲 坐臥 作家名:有馬音文