白波瀬編
言いたい事を言いきって、しばらく私の涙に付き合ってくれた後、ふいに白波瀬さんが言葉を紡いだ。
『……港区に吾妻屋という洋紙店があります』
「え?」
『そこなら僕の名前を出せば、葉月さんの望みの物が手に入ると思います』
「え? どうして? え?」
急にそんな事を言われたので、思わず頭が混乱してしまう。港区の吾妻屋?
『行ってみて下さい。僕から連絡を入れておきますので』
「あ、有難うございます! でもどうして……?」
『罪滅ぼし、ですかね……』
「罪滅ぼし?」
鸚鵡返しに問い返してみたけど、電話越しの白波瀬さんは自嘲気味に笑っただけだった。罪滅ぼしって一体どういう事?
『おっと、こんな話していていいんですか? 早く行かないと行けないんじゃ?』
「そ、そうでした! 本当に有難うございます! 行ってみます!」
電話の向こうの相手に向って勢いよく頭を下げると、私はダッシュで駅に向かった。
よく分らないけど、もうそこが最後の砦だわ!