白波瀬編
***
社長に自分でやるって宣言してから数日が経った。この間の私の日々は奔走ここに極まり! ともいうべき状態で、毎日あちこち駆けずり回っていた。まず私は開発センターに向かい、連日徹夜で新色を作ってくれた開発室の人たちと打ち合わせをし、商品が出来上がるやいなや会社で今度は写真部の撮影に立ち会った。
撮影スタジオではモデルさんが新作グロスをつけて撮影をしている所で、その美しさに思わず見蕩れてしまう。
「あら、水那。開発センターから帰ってきてたのね」
冊子用にグロスの写真を撮る事は、あらかじめ社長から市来さんに伝わっていて、モデルさんのメイクをしていたカレンが私に気づいて微笑んだ。
「うん、新色のグロスをもらってきたから、これ、市来さんに渡しておいてほしいの」
「なあに、疲れてるわね」
「もう、ずっとバタバタで、今日もこれから冊子用の紙を探しにあちこち行かなくちゃで」
「間に合いそうなの?」
「間に合わすの。私の仕事だもん」
「へえ、一人前になってきたじゃない!」
感心したように言うカレンに、私は思わず微笑んだ。
「まだまだっていう事はじゅ〜っぶん自覚してます〜」
「ふふっ、そう卑屈になる事ないわよ。水那、変わったよ。真剣に仕事する姿勢、凄く可愛い」
「もー、またそんな事言うんだもん。と、とにかく! 新色分、よろしくね!」
「了解! 市来さんの頃合い見計らって渡しておくわね。くれぐれも無理はするんじゃないわよ」
「は〜い」
軽く手を振りながら返事をし、私は写真部を飛び出した。印刷所にお願いするまでに時間もあと僅か! なんとかコストと質の両方を兼ね備えたイメージに合う紙を見つけなくっちゃ!