白波瀬編
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相変わらず隙の無い身のこなしで椅子に座ると、「で?」と、目で私の言葉を促す。
ごくりと一度唾を呑み込み、私は意を決して話した。
「あの……やはり今回の件、これ以上社長の手を煩わせるわけにはいきません! 私、必ずなんとかしてみせます! もちろん最終的な部分はご意見を頂きます。でもそこに行きつくまでは、自分で……」
「失敗は許されない事だが、それでいいんだな?」
「はい」
ううっ。とは言ったものの緊張と重圧で思わず手が震えてしまう。社長はそんな私をすっと見据えると、綺麗な形の唇を静かに開いた。
「分かった。その言葉、信じよう」
「は、はいっ!」
怒られるかと思った。けなされるかと思ってた。お前一人で何が出来るって、そう言われるとばかり思ってたのに、返ってきたのは予想に反した言葉だった。
反射的に返事をした後、思いっきり息を飲んだ。だって、信じようって言ってくれたのよ!? あの社長が!!
「じゃあ後は開発センターと写真部の連携をまずはこなせ。紙面のレイアウトはこっちでやろう。ああ、紙の事は忘れるなよ」
「はい!」
「よし、時間はあまりない。掃除なんてしてないで、とっとと動け」
「はい!」
勢いよく返事をして、私は箒を掃除道具入れにしまいに駆け足!
時間はあまりないっていうか、私の経験からしたら全然ないよ! でもやらなきゃ! やるって決めたんだから。社長の信頼に答えなきゃ!