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白波瀬編

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『秀麗の皆さん有難うございました。では最後に美成堂―――』

 拍手とともに壇上へと上がる。社長からの挨拶の後、開発部の方たちの発表が済み、いよいよ私の番となった。
 マイクに入らないよう小さく咳払いをすると、私はぐっと背筋を伸ばし口を開いた。簡単な自己紹介を済ませた後、自分の思いを会場にいる全ての人に向って語りかける。

「……私は化粧品を買う時に、美容部員さんがいるようなお店で商品を選ぼうとすると、少し気後れしてしまいます。目的の物以外にもあれこれと進められてしまうんじゃないか、と戦々恐々と言いますか」

 ここで会場では僅かながら笑いが零れた。といっても馬鹿にしているようなものではなく、私のいかにも小娘といった迷いを微笑ましく受け止めてくれるような、そんな笑いだ。

「かといってドラッグストアなどで購入すると、たまに色味で失敗する事があるんです。ここにいらっしゃる皆様にとってはパーソナルカラーなどは当たり前の知識でしょうが、一般の方にはまだまだ浸透しているとは言い難いです。自分が気に入った色であっても、肌質や肌色などで似合わないという事は、よくある事だと思うのです。かといって試供品が目の前に出ていても、ゆっくり試せなかったり人の目があったりします。人前で化粧をするという行為、これもやっぱり少し恥ずかしいものです」

 また少し会場が微笑む。その穏やかな雰囲気に、私はこの場に圧倒されずに言葉を紡ぎ続ける事が出来る。

「そこで考えたのがこちらの冊子です。画面をご覧ください。このように冊子の中は様々な肌のサンプル写真が載っています。およそ日本人であればこれだけの肌色があれば、どれかは自分の肌に近い物が見つかるはずです。これを使い自分の肌と身比べ、考察し、試供品とともに本来合う色というのを探し出せるように―――これが美成堂が打ち出した販売プランです。美成堂はこの冊子を各販売店舗に無料で配布します」

 無料で配布すると告げると、会場内はざわめいた。こんなに完成度の高い物だもの、普通だったら大赤字だ。それもこれも白波瀬さんが――――
 心に再び引っかかりを覚えながらも、私はなんとか自分の役目を終える事が出来た。
 あとは最優秀賞の発表を待つばかりだ。

作品名:白波瀬編 作家名:有馬音文