白波瀬編
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選考も兼ねて、30分間の休憩が与えられた。
私は社長に「少し出てきます」というと、廊下へと飛び出した。社長は私が何をするつもりか分かっていただろうけど、止めたりはしなかった。私の役目はとりあえず終わったという事だろう。
廊下に出て辺りをキョロキョロと見回していると、背中から声を掛けられた。
「誰をお探しですか?」
「白波瀬さん!」
現れたのはまさに私が探していたその人だった―――。
「お話したい事がありそうですね。ここではなんですから、少し出ましょうか」
「はい」
そう言うと白波瀬さんは私を導いて歩き出した。その背中はいつも見ていたままで、私の胸に何かが鋭く突き刺さった心地がした。