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御影山編

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「あ、あの、私、何か失敗してたんですか?」
「何故?」
「いえ、だって社長がうちに来てるから、もしかしてとんでもない失敗やらかしちゃったのかな? とか」
「お前がとんでもない失敗をしていたら玄関を開けた瞬間に怒鳴っている。いや、来る前に電話で怒鳴っているから心配するな、見舞いに来ただけだ」
「見舞い? ですか? ……お忙しいのに、わざわざありがとうございます……」

 社長、私なんかの心配してくれるんだ。ちょっと嬉しいかも。

「結構熱があるな。解熱剤は飲んだのか?」
「いいえ、今起きたばっかりで」
「ヨーグルトを買ってきた。食べて薬を飲んで寝ろ」
「ありがとうございます」

 社長は私のおでこに手を当てて熱を計ると、ビニール袋から栄養補助食品とヨーグルトを取り出した。
 コンビニで買ったのかな? なんか、想像するとちょっと可愛い。

「疲れて熱を出すなんて、まるで子どもだな」
「はあ、すみません……」
「―――無理をさせたのは俺か……」

 昨日倒れた時といい、社長がしおらしいと気持ち悪い。

「会社の為に頑張るのが社員の仕事ですから。―――それに、私は社長のおかげで美成堂で研修を受けさせてもらえてるんですし、こんなことでお休みもらうなんて、申し訳ないです」
「まあ、そうだな」

 むっ、どっちよ。

「今度の新作発表会だが、お前が俺と一緒に出席する事になった」
「―――えっ?」

 ちょっと待って、この人、何言ってるの?
 私が口に運んだヨーグルトを危うくこぼしそうになると、社長は平べったい大きな箱をローテーブルの上に置いた。
 何、コレ?

作品名:御影山編 作家名:有馬音文