御影山編
驚いたことに、帰りは川島さんの運転ではなく、社長自らが車で送ってくれた。
帰りの車中では一言もしゃべらないという、恐ろしく重たい雰囲気だったのだけど、どちらかというと私の心臓が緊張で破裂しそうだった。
社長の事を少し意識した途端、どんどん好きって気持ちが強くなって行ってる気がする。
気の所為かも知れないけど……ていうか、気の所為だといいな。なんて―――
「着いたぞ」
「あっ! はい! ありがとうございます!」
色々考えてたらアパートに到着していた。
ドアから降りようとした時、ふいに社長が後部座席から紙袋を取り出した。
「晩飯にでも食べろ」
「あ……ありがとうございます……」
なんか、社長って……紳士?
過ぎ去る社長の車を見送り、私はもらった紙袋の中を覗いた。
たまごサンドとサラダと栄養ドリンク。
初めて貰った社長からのプレゼントに、私は知らず破顔していた。