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御影山編

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***

 本当に疲れていたらしく、目が覚めたのは終業時刻に近くなってからだった。
 重たい体をゆっくり起こし、ベッドから降りる。

「あれ、目が覚めた?」

 女医さんが私を見て優しく微笑んだ。
 医務室の女医さんまで美人なんだもんな。さすが美成堂。

「はい、ご迷惑おかけしました」
「迷惑なんてかけてないわよ。あなたは静かに寝ていただけなんですもの」

 それもそうか。
 あれ? 私の荷物がある。

「あの、この荷物って……」
「ああ、秘書の田村さんが持ってきてくれたのよ。社長からあなたの具合が悪そうだから、今日は医務室で寝かせるって聞いたって」
「そうなんですか」

 田村さん、ありがとうございます。

「起きたか?」

 丁度そこでドアが開き、社長が現れた。

「はひ、本当にご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした……」
「歩けるなら帰るぞ」
「はい。先生、ありがとうございました」
「いえいえ、明日は大事を取って休んだ方がいいわよ。栄養のある物を食べて、ゆっくりしなさい」
「え? でも……」

 社長の顔を恐る恐る見上げると、ふうと息を吐いて

「そうしろ」

 と言った。
 何だかお休みするのって気が引けるな。

「取りあえず帰るぞ」
「はい」


作品名:御影山編 作家名:有馬音文