御影山編
エレベーターに乗り、医務室へ行くまでの間私はずっと無言だった。
心臓はドキドキバクバク、それはもううるさいくらいに鳴っていて、きっとその振動は社長にも伝わっているはず。
どうしよう、男の人にこんなに近づいた……っていうか、密着したの初めてだよ。
「少し無理をさせすぎたみたいだな。悪かった……」
ぼそりと社長が言った。
「そんなっ、私こそ、社長や色んな方に迷惑かけて……」
あの御影山社長が謝るなんて、巨大な隕石が降って来るかもしれない―――
「ただの研修生が誰の迷惑もかけずに仕事がやれるなら、お前は今頃VIP専用豪華ホテルのスイートルームで働いてる」
―――なんかまた失礼な事を言われてる気がするけど、まあ、その通りだよね。
そんな会話をしていると医務室に到着し、私はベッドに寝かされた。
「しばらく寝てろ。帰りは送ってやる」
「ひっ、一人で帰れます!」
「うるさい。お前は俺の言う事が聞けないのか?」
ひいっ、目が、目が怖いっ!
「いえっ、お申し出、ありがたく受けさせて頂きますっ」
私の返事に満足したらしい社長は、医務室のお医者さんに私を託して戻って行った。
社長に感謝しなきゃ。仕事の事も、今日の事も。バーで会った時から迷惑かけてばっかりだもんな……