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御影山編

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 社長のおかげで無事冊子のレイアウトも決まり……ていうか、社長ってすごくセンスがよくてびっくりした。美成堂の社長なんだから当たり前なのかもしれないけど、それでもすごい。
 改めて社長の凄さを確認しつつ、印刷会社にも余裕で原稿を持ち込む事が出来た。
 結局企画部さんは私たちと入れ違いに会社に戻ってきたらしく、翌日社長室に謝りにきて社長に怒られてた。
 でも、取引先とのトラブルを解決したこともあってすぐにお説教は終わったんだけど、戻るまでに時間がかかったという事はトラブルも結構大きかったって事だよね。それなのに怒られて、何だか可愛そう。市来さんなんて社長のお説教は暖簾に腕押しで、適当に適当な謝罪を述べてさっさと仕事に戻って行った。

「はあ……」
「葉月さん、大丈夫?」

 知らないうちにため息が出ていたらしく、田村さんが心配そうに私の顔を覗きこんだ。

「あっ、大丈夫です。何だか安心したというか、ほっとしたというか」
「ギリギリ間に合って良かったわね。私たちももう、あちこち連絡したりで大変だったわ」
「今回は本当に駄目かと思ったもんね」

 和田さんも苦笑する。

「後は新作発表会ね」
「あ、ホテルの大きな会場でやるんですよね」
「去年営業部の人と出席したけど、テレビとか報道関係もすごく多いし、芸能人とかも結構来てて疲れたわ〜」
「―――大変そうですね」

 去年の事を思い出しながらため息を吐く和田さんに、よほど気を遣ったのだろうと理解した。そんな大変な所に行くなんて、社交場慣れしてないと無理ね。

「はあ……」

 またため息。
 あれ? なんか私、変?

「葉月さん、本当に大丈夫? 何だか顔色悪いわよ。少し休憩してきたら?」
「いえ、全然大丈夫ですっ」

 大丈夫って言うのに、田村さんは半ば無理やり私を秘書室から追い出した。

「休憩室でコーヒーでも飲んでゆっくりしてきて。仕事が出来たら呼ぶから」

 笑顔でそう言われたら行くしか無いよね……優しいな。
 仕方なく私は休憩室へと向かった。


作品名:御影山編 作家名:有馬音文