御影山編
気づけばすっかり窓の外は暗くなっていて、私は大きなため息をついて立ち上がった。
市来さんも企画部さんも戻って来る気配すらない。
休憩しようと部屋を出て、自販機までおぼつかない足取りで歩く。
「はあ……結局私一人じゃ決められないわ」
腕時計に目をやると、時間は22時を少し回っていた。
印刷所の関係で深夜0時までに入稿しなければ印刷が間に合わない。新作発表会にはグロスと一緒に冊子も出して、他社よりも良い印象を与えたいんだ。どうしよう。どうしたらいいの?
「おい」
頭を抱えた所で、背後から声をかけられた。
「御影山社長……」
難しい顔をして立っている社長を見た瞬間、私は不覚にも泣きそうになった。
「どうした? まだ帰っていなかったのか」
「すみません、社長……冊子のレイアウトがまだ決まらなくて―――」
「何だと? もう22時過ぎているぞ。市来達はどうした?」
「それが、急なトラブルがあったみたいで、2人とも出て行きました」
諦めたように話すと、社長は私の腕を掴んだ。
「お前は今朝俺に何と言った?」
「え―――?」
「俺に手伝って欲しいと言っただろう? 何故すぐ俺に言わなかった」
「あ、その……」
確かに社長に言おうか考えた。でも、文具店や印刷会社の事ですでに助けてもらっているのに、これ以上助けてもらう訳にはいかない。って思って、言えずにいたんだ。
「来い。さっさと済ませて印刷所へ行くぞ」
「はっ、はい!」