御影山編
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文具店を何軒も周り、くたくたになって会社に戻ってきた私は、冊子のレイアウトについて企画部の担当者と、写真部の市来さんと話し合っていた。
川島さんが社長に言われて用意してくれていた文具店のリストを片っ端から当たり、なんとか安く紙を仕入れられるように話しをつけてきた私。もうすっごい自分の中では仕事をやった気になっているのだけど、やらなきゃいけない事はまだまだある。何せ新作発表会まで時間がないんだもんね。
「紙はこれでいいだろう。写真も俺が撮ったものだし、文句なし。あとはやっぱりレイアウトと掲載順番だよな」
市来さんはやれやれといった様子で頭を掻いている。
「日本人に多い肌色順に載せて行くのが一番でしょうね」
企画部の人の言葉に、市来さんと私は頷く。
けど、やっぱりどういう配置で肌とグロスを載せるかが決まらない。
あーでもない、こーでもないと色々と議論が続いていると、市来さんの携帯が鳴った。
「おう……はあ? マジかよ。―――ああ、分かった。すぐ行く」
どうやら良くない事が起こったみたい。
「悪ぃ。外の仕事でちょっとマズい事になっちまった。今日中に戻れるか分からないから、後頼む」
「えっ!?」
そう言って部屋を出て行ってしまった。
もう! 二人だけでどうしろっていうのよ!!
取り残され、顔を見合わせていると……
「もしもしっ」
今度は企画部の人の携帯が鳴った。
これって、もしかしなくてもあのパターン?
恐る恐る見守っていると、
「ごめん! 取引先でトラブルがあったみたいなんだ。先方がすごい怒ってるみたいで、僕が行かないとやばいみたい」
「そ、そんなっ! 今日中にレイアウト決めて印刷会社に出さないと間に合わないんですよっ!?」
「分かってる。急いで戻って来るから、それまで葉月さん、よろしく!」
「ちょっと待ってください!!」
言うが早いか、あっという間に部屋を飛び出して行った企画部さん。
「ああ〜〜〜!! もう、私一人でどうしろって言うのよ!!!」
怒っても仕方ないのは分かってる。けど! こんな状況に素人の私一人置いて、どうするつもりなのっ!?
静かになった室内で、私は腹を決めて写真を眺めはじめた。
出来るだけ少ない枚数で、見やすくて分かりやすいように配置をしなければいけない。
「ここにこのサンプル写真を持ってきて、グロスはこう……? いや、こっちがいいかな?」