御影山編
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社長に頭を下げてから数日後、私は開発センターに向かい、連日徹夜で新色を作ってくれた開発室の人たちと打ち合わせをし、出来上がった商品を持って再び会社に戻ってきていた。
写真部ではモデルさんが新作グロスをつけて撮影をしている所で、その美しさに見蕩れてしまった。
「あら、水那。開発センターから帰ってきてたのね」
冊子用にグロスの写真を撮ることはあらかじめ社長から市来さんに伝わっていて、モデルさんのメイクをしていたカレンが私に気づいて微笑んだ。
「うん、新色のグロスをもらってきたから、これ、市来さんに渡しておいてほしいの」
「なあに、疲れてるわね」
「もう、ずっとバタバタで、今日もこれから冊子用の紙を探しに文具屋めぐりしなきゃなの」
「間に合いそうなの?」
「社長が色々と動いてくれてるから、きっと大丈夫」
「へえ、あんたあんなに社長の事嫌ってたのに、随分信頼するようになったのね」
からかうように言うカレンに、私は舌を出した。
べえっ!
「好き嫌いは別にして、仕事が出来る人っていう事はちゃんと分かってます〜」
「はいはい。じゃあ、これは市来さんに渡しておくわね。無理するんじゃないわよ」
「は〜い」
そこでカレンと別れ、私は会社を飛び出した。