御影山編
落ち着いた雰囲気のレストランに白波瀬さんと向かい合わせて座る。
なんだか恋人同士みたいだな。
こうして良く見ると、白波瀬さんの顔が本当によく整っている事が分かる。初めて会った時もカッコいいと思ったけど、やっぱりすごくカッコいい。うちの鬼社長も顔だけはかなりイケメンだけど……
「何か会社であったんですか?」
料理も食べ終わりそうな頃、白波瀬さんはそれまでしていた他愛無い会話から急にまじめな顔で尋ねて来た。
「い、いえ。ちょっと色々あって、急に新しい仕事を任される事になったんです」
「へえ、すごいじゃないですか!」
「いえ、それが、秀麗にうちの新製品の情報が漏れているらしくて、それでバタバタしてたんです」
「秀麗に?」
「はい。秀麗は美成堂の一番のライバル社ですし、やっぱり商戦的によくないでしょう? それで、うちのグロスももっといいものにしないといけないって話になって……」
「……やっぱりうちの情報も流れてたのか」
「え?」
ぼそりと言った白波瀬さんの言葉が聞こえなくて、私は思わず聞き返した。
すぐに白波瀬さんは笑って、
「いいえ、何でもないです。それで?」
「それで、今から全く新しい商品を作るのは間に合わないので、今出来ている試作品を改良しようという話しになったんですけど、かなり調査や開発にも時間をかけているから、違う方法で秀麗に勝てる方法を考えなきゃいけなくなったんです」
「その仕事を、葉月さんが任されたんですか?」
「はい……でも、私はまだ研修中だし、社長が手伝うと言ってくれたんですけど、それに甘えて良いものか正直悩んでいるんです」
「え? あの社長自らが手伝うと言ったんですか!?」
「はい? ええ、そうです」
白波瀬さんは目を丸くさせて心底驚いているみたい。
あれ?