御影山編
「部長はどう思う?」
「はい、いいアイデアだと思います。ただ、その冊子を作るコストを考えると、グロスの値段が……」
「冊子についてはこちらで検討しよう。グロスに関しては、新しい色合いをもう1、2種類追加してくれ」
「わ、分かりました」
「よし、葉月」
「はいっ」
立ち上がった社長に吊られるように立ち上がり、私は背筋をピンと伸ばした。
「お前の案で行く事にする。冊子の件はお前が言い出した事だからな、写真部の市来やカレンと話し合って、細かい事は決めろ。それから、印刷する会社はいつもうちがお世話になっているところがあるが、紙に関してはお前が安価で良いものを必ず探し出せ。その合間に新しく追加する色などについてここの部長達と連絡を取り、俺に報告しろ。いいな?」
「は、はい……」
ちょ、ちょっと待って。今一気に言われて頭がパニックだけど、私の案が通ったってことよね? そして、私がその案を自分で何が何でも形にしないといけないって事?
「ま、待って下さい社長!」
「何だ?」
「あの、私が出した案を採用していただくのは非常にありがたいし、恐縮で申し訳ないというか……ですけど、ズブの素人の私に、社長の期待に答えられるようないいものが作れるはずがありません!」
「ほう? 新製品を大ヒットさせると大見栄切ったくせに、ここに来て出来ないなどと言い出すのか」
「うっ、それは……」
「―――別に一人で何でもかんでも決めろと言っている訳じゃない。俺に連絡しろと言ったはずだ。駄目なら駄目と俺が言うし、分からない事があれば誰かに聞けばいい。それくらいの事は出来るだろう?」
そう言われると確かにそうなんだけど……
「ふん、いいだろう。そんなに心配だと言うなら、俺がお前と一緒に動いてやろう」
「ええっ!?」
「自分一人でやるか、ありがたく俺に手伝ってもらうか、お前が決めろ。川島、仕事が残っているな、行くぞ」
「はい」
そう言い残し、御影山社長は綺麗な姿勢で出て行ってしまった。
ど、どうしよう!!