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御影山編

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***

 開発センターは、会社から車で20分ほどの郊外にあった。思ったよりすごく立派な建物で、一見化粧品会社関連の施設とは思えないほど。
 社長と川島さんの3人で開発センター内の口紅やグロスを専門に扱う部署まで行き、部長と研究室主任に挨拶をする。

「今度からこの葉月を本社との連絡係として使う。市場調査も基本的に葉月が行ない、お客の要望をふまえ改良点を考えて、より良い製品にして欲しい」

 社長の言葉に、二人は私の顔を見て「よろしく」と軽く頭を下げた。私もすぐに頭を下げる。

「よろしくお願いします!」

 その後、研究室を案内してもらったのだけど、まさに研究室! って感じで驚いた。化粧品ってこうやって出来て行くんだなあ。また勉強になった。

「化粧品を作るには主成分と他の成分の配合を科学的に検証し、人体に影響がないかアレルギーの分野からも細かく試験を重ねて行く。流行っているからといって無闇矢鱈と体に良さそうなものを詰め込んでも、長く使ってもらえるとは限らない」
「美成堂化粧品のコンセプトをベースに、従来の良さと今のお客様のニーズに合わせた開発をしていくんですよ」

 社長の後に川島さんが付け足して説明してくれた。
 そうよね、美成堂と他製品との差別化を図らないと長く愛用してもらえないもんね。

「お前の仕事は重要なものだという事を肝に銘じておけ。研修だからと甘く考えるな」
「分かってます……」

 どうしてやる前から人の意気をくじくような事を言うかな。

 多分私の為だと思うけど、社長は他のファンデーションや化粧水などを開発している様々な部屋を見せてくれた。
 気づけば夕方近くになっていて、帰りの車の中で川島さんから明日のスケジュールを渡された。もちろん私の。明日は中心街にどんと構える自社店舗で、お客様にアンケートを取る市場調査の仕事。一人で朝から夕方までやらないといけないらしい。ちょっと不安……。
 
「大丈夫、本店近くの路上で和田も調査するし、行き帰りは一緒に出来るから。何かあれば本店の人間に聞くといいですよ」
「はい、頑張りますっ」

 川島さんが私の緊張を読み取ったらしく、そう言ってくれた。
 和田さんが近くにいるならちょっと安心だ。良かった。

「川島、あまりこいつを甘やかすな。自分で考えて行動するようにさせないと、困った時に投げ出されては困る」

 不機嫌丸出しで言う社長。いくらなんでも困ったからって仕事を投げ出したりなんかしないもん!

 
 
作品名:御影山編 作家名:有馬音文