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明月院編

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 会場に到着すると、若い女性のお客さんがすごく多くてびっくりした。
 さすが明月院さん。顔の良さはピカイチだし、演奏も凄いもんね。女性ファンが多いのは納得……でも、ちょっと複雑。

「葉月さん」
「あっ」

 肩を叩かれ顔を上げると、明月院さんの弟さんがいた。
 クラシックの世界に戻ると言った明月院さんとは、ちょっと時間がかかったけど仲直りしたみたいで、今日も一緒にコンサートに出るのよね。

「兄が楽屋に来るようにって。メール、見ませんでした?」
「あ!」

 私は携帯を取り出してメールが来ている事に気づいた。

「ごめんなさい、急いでたから気づかなくって」
「遅いから、心配して僕に見に行くように頼んだんですよ」
「そ、そうなんですか、すみません」
「さ、行きましょう」
「でも、いいんですか?」

 私、部外者なのに楽屋なんて入って大丈夫なのかな?

「大丈夫ですよ、さ」

 促され、私はホールの裏にある楽屋へと案内された。



作品名:明月院編 作家名:有馬音文