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明月院編

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 とうとうこの日がやって来た。
 新作発表会。
 大きなホテルの会場は人がいっぱいで、会場前方に作られたステージもミラーボールが回る室内も、どれもが今まで見た事もない世界で驚きっぱなしだ。
 明月院さんに選んでもらったワンピースを着て、きょろきょろと落ち着き無く辺りを見回す。
 確か今日は明月院さん、会場でピアノ演奏をするって聞いたけど、見当たらないなあ……。あと、白波瀬さんもいるかな? って思ったけど、見つからないや。

「お前は相変わらず落ち着きがないな」

 一緒に来ている社長にはまたため息を吐かれ、項垂れる。

「すみません……」
「今日のお前の出来次第で商品がヒットするかどうかがかかっていると言ってもいいんだぞ? しっかりしろ」
「そっ、そんなプレッシャーかけないでくださいっ!」

 なんて、戦々恐々しているうちに、とうとう新作発表会が始まった。
 大音響で音楽が流れ、ステージ中央にスポットライトが当たる。ステージ袖から2人のモデルさんが出てきて、会場から拍手と歓声が沸き起こる。
 うわあ、綺麗……。
 さっきまで怖くて緊張しっぱなしだったのに、もう見蕩れてる。我ながら単純だわ。
 次々と各化粧品メーカーのプロモーション映像と音楽が流れ、モデルさんが美しいウォーキングで私たちの前を歩く。
 今日、発表会に参加しているのは我が美星堂を合わせて5社。うちは一番最後だから、次の次。

「秀麗か」

 ボソリと社長が呟いて、会場の音楽が変わった。

「次は秀麗の新作、リップグロスです!」

 司会者の声と同時にモデルさんが出てきて、拍手がさらに大きくなる。
 秀麗もうちと同じでリップグロス。キラキラ光って、とっても華やか。

「最後は美成堂です。こちらも新作はリップグロスですっ!」

 ふっと照明が落ち、ピアノの音色が聴こえてきた。

「あっ!」

 突然ステージ袖にスポットライトが当たり、そのスポットライトの中でグランドピアノを弾いている明月院さんの姿に驚いた。
 もちろん演奏している曲はこの新製品のリップグロスのために作られた曲。
 ピアノの演奏に合わせて出てきたモデルさんの姿を見て、私は感動して涙が出てしまった。

「社長……」
「なんだ?」
「私、今、猛烈に感動してます……」
「そうか。良かったな」


作品名:明月院編 作家名:有馬音文