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明月院編

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「明月院さん! あんな失礼な事言わせておいて良かったんですか!? 明月院さんが作る音楽のどこがチャラチャラしてるんですか!? ―――ああっ! 何か言ってやれば良かった! 悔しい!!」
「あんたが怒ってどうする? 変なやつだな。―――あいつは俺の弟だ、クラシックをやめた俺を憎んでいる」
「え? 弟さん? 憎んでるって……」

 明月院さんはクラシックをやめたと言っていたし、さっき弟さんは演奏の準備があると言っていた。確かに言い方はすっごく失礼だったし腹が立ったけど、もしかしたら弟さんは明月院と一緒に演奏したいんじゃないかしら? 一緒に演奏出来ないのが寂しくてあんなきつい言い方をしたんじゃ……

「もうすぐ始まる。早く入るぞ」
「あ、はいっ」

 それからはすごく素敵な演奏を、睡魔と戦いながら鑑賞した。初めて生で聴くクラシック音楽はすごく綺麗で、さっきの感じ悪い明月院さんの弟さんも、お父様も、素人ながらだけどとても素晴らしい演奏だったと思う。
 雰囲気的に敷居が高い感じがするし、聴いても分からないっていう理由で避けてたけど、クラシックって何となく気持ちがリラックスする感じがするな。

 コンサートが終わってさっさと会場を出て行く明月院さんに着いて歩いていると、会場を出た所で呼び止められた。

作品名:明月院編 作家名:有馬音文