明月院編
「今度の新作発表会だが、俺と一緒に出席予定だった人間が出られなくなった。代わりにお前ついてこい」
「―――ええっ!? わ、私がですかあっ!?」
「汚い格好では困るからな。それなりの格好で来いよ」
「そ、そんなあ……」
やっとCM用の曲も出来上がってご機嫌になっていたところにこの一言。
新作発表会って、一体何をするの!? おまけに、何を着ていけばいいのよっ!?
「あたしのドレス、貸したげよっか?」
「カレンのドレスじゃ骨格が違い過ぎてずり落ちちゃう」
「まっ、失礼ねっ」
カレンの申し出はありがたいけど、元々男であるカレンは、いくら美人でも背が高いから私とはサイズが合わない。
「お洋服買いに行くの、一緒に行ってあげたいけど、忙しいからなあ……」
心配してくれているらしいカレンに、私は困ったような顔で笑った。
「ま、まあ。自分でなんとか探してみるよ」
「それなら、明月院」
私とカレンのやりとりを聞いていた社長が、ドアのすぐ側で静かに立っていた明月院さんに声をかける。
「お前、こいつの服選びに付き合ってやってくれないか?」
うわっ!? 社長、何を言い出すんですか!? 嫌って突っぱねられるに決まってるじゃないですかっ!!
「―――別に構わない」
ほ〜らね。やっぱり…………
「―――え?」
まさかの一言に、私とカレンは二人して大きく開いた目を見合わせたのだった。