明月院編
「新しいグロスのイメージを弾いてみて」
「えっ!?」
「―――うるさい、早く弾いて」
は、早く弾いてって、この人何言ってるの!? さっきから訳が分からないけど、もう本当に訳がわからない!! もしかして私の事、いじめてる? 何も出来ないから追い出したくて、わざとこんな事させてるの? そんな……そんなの酷いよ。酷過ぎるよ!
「……私、明月院さんの邪魔にならないように、お手伝いが出来るように頑張りたいんです。それなのに、どうしてさっきから無茶な事ばっかりさせるんですか?」
もう駄目だ。私にはここで出来る事なんて初めからひとつも無かったんだ――――
「社長に頭を下げて、部署を代えさせてもらいます……お世話になりました!」
ガタン!
私は勢い良く立ち上がり、部屋を飛び出した。
走って走って、エレベーターなんかには乗らず、階段を一気に駆け下りた。どこをどう走ったなんて分からない。だけど、涙が止まらなかった。