小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

明月院編

INDEX|12ページ/47ページ|

次のページ前のページ
 


「あれ?」

 私はたくさんあるヘンテコなものの中の一つに、緑や赤色が上下に動くメーターのような物を見つけた。

「どうしてこれだけ動いてるのかしら?」

 不思議に思ってそのメーターの真下にあるボリュームスライドらしいつまみをぐいっと上げた。

「うわっ!?」

 突然スピーカーからピアノの音が飛び出して来て、私はびっくりした。

「何これ? ……あ、もしかして」

 ふとガラスの向こうでピアノを弾いている明月院さんを見る。
 やっぱり明月院さんが弾いている音が聞こえてるんだ。―――すごく綺麗な曲。
 でも、なんでだろう、とても悲しく聞こえる。
 どんどんと紡がれて行くピアノの音色は、綺麗なのに私の胸を締め付けた。そして気づくと、私の目から涙がこぼれていた。

 突然音がやんだ。ガチャリと重たい音がして、明月院さんがこちらへと戻って来る。ものすごく険しい顔で。

「何をしているの?」
「え……あ、すみません」

 やばい、涙拭かなきゃっ。

「誰が勝手にブースの音を拾っていいって言った?」
「ご、ごめんなさい。マイクスイッチを探してて、ここだけメーターが動いてたから気になって……」
「マイク? 俺に何か用?」
「い、いえっ、違うんです。私、こんな機械見た事無くて、さっき明月院さんが言った言葉の意味もよくわからなくて、それで探してみようと思っただけです。すみません」

 もう、本当に私のバカ!
 ぐいっ! と頭を下げると、明月院さんはため息を吐いた。

「別にいい。あんたの所為でやる気なくなったから出かける」
「えっ!? あの、ちょっと待って下さい!」
「―――声、うるさい」
「すっ、すみません」

作品名:明月院編 作家名:有馬音文