春日編
3
「うわ、ひっどい顔」
朝一番、顔を会わせた瞬間に私は春日さんにそう言われた。なじられた?
「営業は会社にとって大事な仕事って言ったよね。そんなひどい顔で営業回ったら、悪印象与えるって分かんないかな? うち、化粧品の会社なんだけど」
「すみません……」
私のこのひどい顔は、昨日遅くまでカレンに借りた本や貰った新製品の資料を読んでいたから。
読み出すと色々な事が気になっちゃって、ネットで調べたりしてたら夜中の2時過ぎてたのよね……おかげでクマはできるし肌はカサつくし、最悪。春日さんに怒られて当然だ。
「取りあえず今日一緒に外回りに行く美容部の人に、そのひどい顔をもう少し見られる位にメイクしてもらって」
くるっと私に背を向けると、春日さんは自分の席に戻って行った。
「―――はい」
ずっと怖い顔をしてた。当たり前よね、仕事を始めた翌日にいきなりこんな寝不足全開の顔で出社したんだもん。
私は肩を落としてカレンのいる美容教育部へと向かった。