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春日編

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 とうとう新作発表会当日がやってきた。
 たくさんの人人人! テレビカメラやカメラマンなんかの報道陣もたくさんいて、今にも緊張で倒れそう……そう言えば白波瀬さん、今日来るって言ってたよな。どこにいるのかなー。会いたいな。

「ちょっと、何キョロキョロしてんの? もうすぐ始まるから、もう少ししっかりしてよね」
「あ、すみません……」

 今日の春日さんは一段と可愛い。いつもよりちょっとお洒落なスーツを着てて、胸には受付で無理やりねじ込まれた花が刺さってる。それがまた春日さんの可愛さを引き立てて、さっきから周りの女の人たちの視線が痛い。
 突然、わあっ! という歓声にも似た声が辺りに響いて、私は思わずそちらへ顔を向けた。

「あっ!」
「ん?」

 なんと! そこにいたのはあの白波瀬さんだった! たくさんの人に囲まれて、取材の人達からマイクを向けられて少し困った様な顔をしている。
 なんで? どうして白波瀬さんがあんなに注目されてるの!?

「来た来た」

 とっても嫌そうに春日さんが呟くと、白波瀬さんがこちらに近づいてきた。

「やあ、葉月さん。こんにちは」
「えっ、あっ、こんにちは……」
「ちょっと待った!!」

 差し出された手を握ろうとした所を、春日さんが割り込んで血相を変えて叫ぶ。

「やあ、キミは確か営業部の……」
「春日雅です! それよりも、どうして秀麗の社長であるあなたが、うちの研修生を知っているんですか?」
「友達だから。ね? 葉月さん」
「え? いや、その」
「あんた! 自分が何をやったか分かってる!? うちの商品の情報が漏れてたの、あんたの責任だよ!」
「えっ?」

 一瞬頭が真っ白になった。
 だって、情報が漏れてるって、え? 私の責任なの?
 いや、春日さんの言う通りだ。もし、本当に白波瀬さんが秀麗の社長であるなら、私はグロスの話しをぺらぺらとしゃべってしまった。

作品名:春日編 作家名:有馬音文