春日編
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全然お手伝いなんて必要無かったじゃない……。
春日さんは料理の手際もすごく良くて、あっという間にパスタとスープとサラダを作ってしまった。こういうのを見せられると、女としてちょっと情けない。
でも、料理が上手な男性って憧れちゃう。
仕事も出来て、料理も出来て、性格はちょっとオレ様だけど、カワイイ顔をしてて、モテない訳がないわ。
テーブルに並べられた料理に笑顔を浮かべながら、私は春日さんの顔を盗み見る。
やっぱり可愛い顔なのよね……。
「冷めないうちに食べるよ」
「はい。いただきますっ!」
美味しそうなパスタをぱくりとひと口―――
「美味しいっ! 春日さんって料理もお上手なんですね! すごいっ」
「どうも」
「でもこれだけ料理上手だと、彼女さんも大変でしょうねえ」
さり気なく確認してみたりして。
「彼女とかいないし。って、言わなかったっけ? 僕、人を信用してないって」
「確かに聞きましたけど、でも恋人って、辛いときの支えになってくれたりしませんか?」
「僕には必要無いね。第一彼女なんかいて、休日の度にどこそこに連れて行けとか、何を買ってとか、面倒じゃん。僕は仕事が第一だから基本構ってやんないし、そうなると今度は私より仕事の方が大事だとかなんとか言ってさ―――」
そこまで言うと、春日さんはハッとした顔で私を睨んだ。
「だから、とにかく彼女とかいらないの!」
「なるほど」
前の彼女がそういうタイプだったんだな。
「ほら、さっさと食べて」
「はーい」
何だか春日さんとこういうやり取りが出来るようになったのが、すごく嬉しい。最初は完全に邪魔者扱いされてたし、嫌われてたもんね。それがこうしてご飯を食べながらプライベートな話しとかお仕事の話しが出来るなんて、もしかして―――
理想の上司と部下!?
ちょっと憧れてたのよね〜。ん? でも春日さんって私と1つしか歳違わないもんな……いい、先輩後輩! って関係になれたらいいのに。―――ああ、でも、今回のグロスがヒットしなかったら春日さんと会う時はきっと廊下かトイレぐらい。ヒットしてほしい。ううん、これだけ頑張ったんだもん、きっと成功するよね!?
「―――さっきから何一人で百面相してるの?」
「あ……」
「なに? 僕が作った料理、口に合わなかった?」
「と、とんでもない! すっごくおいしいです!」
「……あ、そ」