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春日編

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「あのぉ……」
「―――なに?」
「いえ、どうして私が、こんな所にいるんでしょうか?」

 私の頭の中は疑問だらけ。だって、私は今、春日さんのマンションにいるんですものっ!!!

「あんたが仕事の事とか新作発表会の事を教えて欲しいって言ったんでしょ?」
「いえ、確かに言いました! 言いましたけど……」

 仕事について色々と教えて欲しいと言ったのは昨日の事。
 新作発表会まであまり日もないし、営業の仕事についてとか、発表会でどんなことをするのかとか、もっと美成堂という会社についても勉強したいと思った。
 そう思ったら、教えてもらえるのは春日さんしかいない訳で、怒られるかいやがられるのを覚悟して頼んだら、何故か今、私は春日さんのマンションのダイニングテーブルに座っている。
 どこでどうなってこうなったの???

「なに? もしかして、僕があんたを家に連れ込んでなにかするとでも思ったの?」
「なっ……! 思ってません!!!!」

 この人なにとんでもないこと言ってるの!?
 
「取りあえず、お腹空いたから先にご飯にするから」
「え? 春日さんが作るんですか?」
「……他に誰が作るの? もしかして、あんたが作ってくれるわけ?」
「お、お手伝いくらいなら……」

 まさかの春日さんの手料理! ―――って喜んでる場合じゃないわ! とにかく落ち着け、私の心臓!
 キッチンに入って行く春日さんの後に付いて行くと、台所も綺麗に整理されていた。前に春日さんが倒れた時着替えを取りにきたけど、キッチンなんて見なかったもんな。それに、お部屋が片付いているのは彼女さんがいるからだとか勝手に思ってたし……。でもこうして私を家に上げてくれたってことは、特定の彼女はいないって事なのかな?

「ちょっと、ぼーっとしてないで手伝ってよね」
「あ、はいっ」

作品名:春日編 作家名:有馬音文