小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

春日編

INDEX|24ページ/38ページ|

次のページ前のページ
 


「いらっしゃいませ」

 とうとう店内に入った私と春日さん。おどおどしている私と違って、春日さんはいつもの天使の営業スマイルで女性店員さんに話しかける。

「こんにちは、彼女にプレゼントしたいんですけど、お勧めの商品って何かありますか?」
「プレゼントですか、素敵ですね。ファンデーション、アイシャドウ、口紅、どういったものをお探しですか?」
「そうですね、今度何か新しいものを出すってちょっと聞いたんですけど、どんな感じなんですか? 彼女、それが気になるらしくって」
「はい、我が社は今度の新作としてリップグロスを考えております」

 すごい、ごく自然に話しを新製品の方に持って行った。春日さんの営業力って、こういう会話術の上手さなんだなあ。―――あと、この営業スマイル。店員さんすっかり春日さんの笑顔にやられちゃってる。

「ああ、リップグロス。ねえ、水那。グロスの新作が出るらしいよ?」
「え?」
「ほら、どうしたの水那。ぼーっとして」

 まさかの名前呼びに一瞬心臓が締められたわ。しかもそんな笑顔で振り返られたら勘違いしそうになっちゃう。なんかただ名前を呼ばれただけなのにすごくドキドキして、本当に春日さんの彼女になったような錯覚になるわ……。
 おっと、いけないいけない! カップルって設定だもんね! ようしっ。

「グロス、欲しいと思ってたの。あ、でも確か美成堂でも新作が出るんでしょ? そっちもちょっと気になるなあ。確か専門店だけで何かサンプル貰えるって友達が言ってた(嘘だけど…)」
「そう? じゃあ、サンプルとかもらえるならそっちにする? 美成堂なら僕の知り合いもいるし、もしかしたら色々良くしてもらえるかも」
「え〜、そうなの? おまけとかしてもらえるなら、そっちの方がいいな〜」
「お、お待ち下さいお客様」

 ―――かかった。
 私と春日さんの見事な会話で、店員さんが焦り出した。すぐに店の奥に引っ込むと、何やら小さいカゴを持って出て来た。

「こちら、私どもの新作グロスの試供品でございます。ここだけの話しですが、まだ一部のお客様にしかお渡ししていないものです」
「へえ……」

 春日さんは店員さんがカゴの中から取り出したサンプルをまじまじと見つめた。そして私にそれを渡すと、

「水那はどれがいい?」

 再びあの笑顔で尋ねた。―――可愛い……
 おっと、また見蕩れちゃった。仕事仕事!

「う〜ん、なんだかどれも素敵で悩んじゃうな」
「それではこちらでメイクしてみませんか?」
「いいんですか? お願いします!」

 よし、これでもっと詳しい情報が聞き出せそう!


作品名:春日編 作家名:有馬音文