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春日編

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***

 なんとか見られる顔になった私は、春日さんと美容部の女性、背が高くて綺麗な人が和田さん、小柄で可愛らしい人が田村さんの4人で近くの商業施設へとやってきていた。
 化粧品を取り扱う店舗の店長と、チーフスタッフの前で新製品の試作品を取り出し、和田さんが田村さんに化粧をして行く。

「今回の美成堂の新製品は、日本人の肌になじむコーラル系を一番の売りにしています。色んな肌質の方に合わせた全6種類で、見てお分かり頂けるかと思いますが、パールを配合し、より立体的で美しくふっくらとした唇に見せる3D効果を出しています」

 どんどんと商品の説明をする春日さんの姿に、私は営業部のトップだという事を実感していた。
 店長とスタッフが真剣な表情で春日さんの説明を聞き、より可愛らしくメイクをされていく田村さんの顔を見つめる。
 すごいなあ、春日さん。私だったらきっとしどろもどろになっちゃう。それだけ新製品に自信と信頼を持っているから堂々と説明出来るんだろうけど、それだけじゃない。春日さんの言葉ひとつひとつが聞く人を惹き付ける魅力を持っているからなんだ。
 
「あの、ちょっと私も使ってみていいですか?」

 チーフスタッフが尋ねると、春日さんは私には見せた事の無い笑顔で頷いた。
 うわ、営業スマイルって分かってる。分かってるのにすごく可愛い! ―――って、何考えてるのよ、私っ!!

「どうぞ、せっかくですので、うちのスタッフにメイクをさせましょう」
「はい!」

 そしてどんどんと美しくメイクアップされていく自分を見て、チーフスタッフは目を輝かせた。

「素敵です! このグロスはナチュラルだけどしっかり存在感も出ていて、魅力的な唇に見せてくれるんですね! 私も欲しい!」
「ありがとうございます。まだ試作段階ですので、出来上がりはもっとお客様にも満足して頂ける商品になります」
「今度の新作は是非、店舗入り口に美成堂さんのグロスを置かせていただきます」

 店長もとても笑顔だ。こんなにも会社の商品を喜んでもらえるのが嬉しいなんて、思いもしなかった。
 春日さんって、凄い……私も頑張らなくっちゃ。

作品名:春日編 作家名:有馬音文