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就職難民 黙って俺についてこい!

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「最後は制作部だな。お前にはそこの音楽担当者と会って貰う」
「音楽担当?」
「CMやなんかで流れている曲があるだろう。ああいうものの選曲や場合によっては作曲もしている明月院 聖(めいげついん ひじり)という男がいる」
「明月院さん」
「年もお前とそう遠くはない。確か今年で25だったはずだ。と、ここだ」

 フロアの一番奥に辿り着いた来た社長は、目の前のドアをノックした後じっと待っていた。
 今までの部屋はノックするとすぐにドアを開けていたのに、何故だろうと不思議に思いながらも、私も社長の後ろでじっと佇む。

「……どうぞ」

 しばらくして、神経質そうな声で返事が返って来た。

「入るぞ」

 ドアの向こう、見た事も無い機械をバックに佇む男性に―――目を、奪われた。
 なんて綺麗な男の人なの……。

「どうかされましたか?」
「お前のアシスタント候補を連れてきた。葉月 水那だ。葉月、この男が明月院だ」

 目の前にいる端麗な男性にまだ見とれている私を、明月院さんはじろりとねめつけた。

「彼女が――俺の役に立つ?」
「ように見えるか」
「全く」
「だろうな」

 なんなのよ、このやりとりは! さっきから私の事を馬鹿にしてるだけじゃない! この人もこういうタイプなの!? この会社には人並みの優しさをもった人はいないの!? いい加減にしてっ! なんて心で叫びつつ、就職の二文字を脳裏によぎらせグッと我慢。にっこり笑って頭を下げて――

「葉月水那といいます! 精一杯やらせて頂きます!」
「……うるさい。今ちょうどいいフレーズが浮かんで来たんだ。話は分かりましたので、失礼します」

 そう言うと明月院さんは一方的に扉を閉めた。
 頭を下げた姿勢のまま、顔に張り付けた笑顔がひきつる。もういい、もう分かった。どこに行こうと人間関係には苦労しそうだ。だったら覚悟を決めるしかない。
 そんな風に割り切って、何事もなかったかのように頭を上げると社長が私を面白そうに見ていた。

「今日一番のインパクトだったか? だがあいつはいつもこういう風でな。そうそう、一つお前に忠告しておくが、この部屋に入る時は必ず中から返事があるまで待て。あいつの作業中に開けてみろ? どうなるかは保証せんぞ」

 この社長がここまで言うのだから、返事を待たずに開けたりしたら、どんな目に合わされるか分かったものじゃない。見た目も声も神経質そうだったけど、本当に神経質なのね。気を付けなくっちゃ。まだ命は惜しいし……。
 こくり、と神妙に頷いた私を社長は満足そうに見返した。

「まあ、この3つの部署からどれか選んでもらうんだが、今すぐというのは無理だろう。明日まで猶予をやる。朝一番に俺の所へ来い。そうだな……あとは会社を案内してやろう。普段忙しい俺様が案内してやるんだ、ありがたく思え」
「―――はあ、ありがとうございます」

 なんといってもあの美成堂の社長なのだ、本来なら私のような人間の相手などしている暇は本当にないと思われる。それでもこうして気にしてくれているのだから、思ったより優しいのかもしれない。
 仕事も絶対に結果を出すと言い切ったのだ。やるだけの事をやろう。私は改めて決意した。