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就職難民 黙って俺についてこい!

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「宣材用の写真なんかを撮影・管理する場だ。今からそこの市来 凱(いちき がい)という男に会って貰う」
「市来さん……」
「名前くらいは見たことがあるんじゃないか? 今、街中に貼られている美成堂ファンデーションのポスターあるだろう。あれを撮ったのも市来だ」
「そういえば……! 雑誌とかでも撮影‘市来凱’って書いてあるのを見たことあります!」
「市来の腕は確かだからな。まだ28歳と若いが、その感性も技術も本物だ」

 再びエレベーターに乗り込むと、私はふと疑問を口にした。

「あの、普通宣材用の写真とかって外部委託じゃないんですか? 会社でカメラマンを、しかも市来さんのように有名な方を雇うなんて」
「そうだな、普通は外部に発注する。美成堂では市来を専属で使っているが、奴は奴でフリーでの仕事も受け持っている。社員という訳ではない」
「なるほど」

 社長からの説明になんとなく納得していると、エレベーターが目的の階に到着した。フロアに出るとそこは今まで見てきた社内とは雰囲気がガラリと変わっていた。
 廊下は黒っぽい色を基調としていて装飾品などが揃えてあり、照明も間接照明にされていて、どこか美術館のような落ち着いた様相になっている。
 その廊下を少し進んだドアの前までくると、社長は静かにノックした。

「市来、入るぞ」
「うぃ~」

 中から酔っぱらいのような返事が聞こえてくると、社長は無遠慮に扉をガチャリと開いた。出迎えてくれていた男性は、あくびをしながらぼりぼりと頭をかいている。この人が、市来さん? 不精髭を生やしたままのその姿は、美成堂ファンデーションのイメージとはかけ離れていて、思わずちょっとだけ身を引いてしまった。

「なんだ、寝ていたのか。だらしない」
「社長、こっちは朝まで仕事だったんですよ。モデルの子達もさっき帰ったようなもんで……。というか、そっちの子は?」
 
 社長の後ろに控えていた私を目にとめると、社長に向ってすかさずそう尋ねる。

「ああ、こいつは葉月水那。うちの新入社員候補だ」
「ほー。社長がわざわざ連れまわして? へぇ……どっかのお嬢さんかなんかですか?」
「お前の眼は節穴か。こいつのどこがそんなタマに見える」
「ははっ。やっぱ違ったか」

 やっぱってどういう事よ! 失礼ね! 確かにお嬢さんじゃないけど! ……ないけど初対面の人間の目の前で何なのよ、この会話は!
 なんて憤っている私は無視して、男性2人はどんどん話を進めていく。