Chat Noir
最後の縦線を書くため、右手を頭上に伸ばした。
大脳縦裂と中心溝の交差点・手刀の切っ先・天頂を、真っ直ぐに列した。
指先が熱くなる。
意識を失いそうな眩暈を感じる。
指先に挟んだカミソリの刃を投げつけるように、目先まで一気に斬り下ろした。
「matenkoufukutensohaka!」
オッドアイは、目を見開いたまま動きを止めた。
しかし……終らなかった。
更に強く、室内の空気がピリピリと肌を刺激していた。
収束し蓄えられた電荷が、極限値に達しようとしている感じだ。
発散の中心は、すぐ近くにあった。
先程まで目を潤ませていた少女の体が、金色の光に包まれている。
頭を垂れて軽く目を閉じ、肘から先の両手を天に向かって広げていた。
純白の翼を着けなくてもエンジェル、いや、マルアハに見えた。
たぶん、カスティエルよりは……
強いに違いない。