まほうのかがみ
あの後、王様は大変お怒りになられました。怒ります。
侮辱だと、不敬だと。
そして王様は魔法使いを国から追放しました。
魔法使いはその言い渡しに何も言うことなく、受け入れたそうです。
一人の魔法使いはお城に二つの鏡を残して、何も言わずに国を出て行きました。
けれど、しばらくして王様は気づくのです。
王様は自分を欺く人々が嫌いでした。
王という自分のいる場所しか見ずに寄ってくる人々が嫌いでした。
しかし、王様は気づくのです。
誰と会うにもまずはその人を魔法のかがみの前に立たせていた王様。
そんな自分は果たして彼らとどう違うのか。
魔法使いの言葉が頭に浮かびます。
相手の”こころ”と向き合って初めて、人は友になれるのだと。
だとしたら自分はどうなのか。
友だと信じて疑わなかった魔法使い。
彼の”こころ”を見た王様。
だからこそ王様は魔法使いを信頼し、尊敬し、友とよびました。
けれど気づくのです。
魔法使いは一度も王様に魔法のかがみの前に立てとは言いませんでした。
魔法使いは王様の”こころ”を知りません。
それでも魔法使いは王様と話、心をくだき
王様を友とよびました。
誰が間違っていたのか。
何が間違っていたのか。
この時、初めて独りの王さまはそれに気づいたのでした。