「仮面の町」 第二十話(最終回)
「私は会長に退くから、息子が後を継ぐようになるまで傍付きで教育してやってくれないか?」
「息子さんの教育?お幾つなんですか?」
「天木さんと同じ年だよ」
「じゃあ、大学生ですね?」
「そうだよ。教育なんて出来る年齢ではないですよ」
「そういうな、友達みたいな感覚で仕事を一緒にやってくれればきっとキミの素晴らしい部分を吸収してくれると思うんだ。
頼めないか?ご両親と奥様にも私から頼んでみるから・・・嫌われているから逆効果かな?」
「考えさせてください。まずは今仰ったことを実行なさって僕に見せて頂いてからということにします」
「私の事恨んでいないのか?」
「ここに来る前は絶対に許さないと決めていましたが、話しているうちに罪を憎んで人を憎まずとの教えを思い出しました。
私は被害者の遺族でも友人でもありません。直接あなたが憎いという感情は事故が解決したら弱くなるでしょう。罪はそれだけではないかも知れませんが、深谷さんのことも身内のこととはいえご遺族に恨まれるようなことはなさらないで下さい」
「解ったよ・・・彼のことは反省している。長く一緒に働いてくれていたのに最後は裏切るような形になって申し訳ないと思っているよ」
「本当にそう思っているのですか?」
作品名:「仮面の町」 第二十話(最終回) 作家名:てっしゅう