「哀の川」 第三十七話(最終回)
初めての海外旅行に胸躍らせる由佳、純一に逢いたい気持ちを募らせる麻子、幸せな気持ちで旅立てる杏子、ただ一人男性の佐伯は責任感とみんなの無事を考えていた。
それぞれの想いを乗せたロンドン行きは成田を出発した。
ヒースローには純一が迎えに来ていた。4人を見つけて大きく手を振った。
杏子や麻子の会話力で難なく通関は通った。由佳は二人の女性が当たり前に話す英語にビックリした。
佐伯は杏子がオーストラリアに住んでいたことを知っているから驚かない。自分も簡単な会話ぐらいは不自由しない程度話せた。由佳にはすべてがカルチャーショックだった。
純一を見つけて、大きな声を出した。
「純一さ~ん、来たわよ!」由佳は、しっかりと抱きついた。以外にも純一はキスをしてきた。こちらでは当たり前になっているのだろうか。
「待っていたよ、由佳!逢いたかった。母さんも、それに佐伯さんも、杏子伯母さんも元気そうだね」
タクシーで市内見物をしながら、みんなで夕食を食べた。ロンドンでの生活がやっと慣れてきて、言葉に不自由しなくなってきた、と純一は話した。ホテルへ戻って、旅の疲れと時差をなくすために現地時間の夜までゆっくりとしてから、眠りに就いた。
作品名:「哀の川」 第三十七話(最終回) 作家名:てっしゅう