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ひと☆こと~ラヴストーリィ

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あれから時間は経ったものの、僕の中の時計だけは壊れてしまっているらしい。
普通ならこういう時のことを『あの時のまま』というのだろうが、それとも違う。
時間が飛んだり戻ったりするのだ。
最近知り合った女性と、街を歩いていても「ここ来たよね」とか「やっと来れたね」とまるっきり知らないことを話しているらしい。

かなり重症だ。

彼女の事などすぐに消えてしまうだろうと思った。
(忘れよう)
それもいいかと、新しい出会いを求めて、一度だけあの店にも行ってみた。
だが、すぐに逆効果と悟り、諦めた。
彼女との思い出ばかりがよみがえる。

僕の携帯電話には、時々書いては送信しないまま保存しているメールがある。
ずっとアドレスは変えていない。
いつか、どんな状況ででも彼女が送ってくれたときに寂しい思いをさせない為に。

たぶん、いやきっと幸せに、男の人とも仲良くできるようになっているかもしれないが、また心を閉ざすような男に会っているかもしれない。
まあ、その時に僕に助けを求めてくるとは限らないのだが……待っていたい。
できれば、[元気です]というメールが欲しい。
(あ、それならメールなど来ないか……)

こんな僕と会っているこの女性。
付き合い始めの頃は、僕の可笑しな行動に喧嘩らしきことも何度かした。
だが、僕の心にまだ彼女が居ることも承知しているようだ。
もちろんそのことは、何も言わない。

「(僕を)好きだから仕方ないの」と一度だけ言ったことがあっただけだ。

僕もこの女性に好意をもっているが、もし彼女から連絡があったら僕はどうするの
だろうか?!
その時のことは、なるべく考えないようにしているというのが、身勝手な本音だ。

着信音。メールが届いた。
ポケットにある携帯電話に手を伸ばしたが、手を止めた。
「どうぞ」
その女性が促す。
まだ登録のないアドレスだ。

僕の心のざわめきが聞えないように女性の手を握り、雑踏の中へと歩いていった。